第14話

「はい。桐島です。」 


電話に出たすみれに対し、一呼吸おいて、落ち着いた男性の声が返ってきた。


「桐島日向さんのお宅ですか?警察です。」


すみれは一瞬、電話の相手の言っていることが理解できなかった。


「・・・。は?警察?」


普通に生活していて、ましてや16歳のすみれには、警察から電話がかかってくるなんて思いもしなかった。


『警察』と言ったすみれの声を聞いて、すみれの母親はすみれの元に駆け寄り、彼女から受話器を受け取った。


「すみません。代わりました。はい。・・・母親です。・・・はい。わかりました。・・・はい、今から行きます。」


メモを取りながら話していたすみれの母親は、電話を終えて静かに受話器をいた。


電話を終えてから、しばらく動かなかった母親に、すみれは嫌な予感がして聞いた。


「お母さん!何?何て?警察って、何があったの?」


すぐに答えない母親に、すみれはますます不安になった。


「お母さん‼︎」


すみれの声で我に返った母親は、ゆっくりと話し出した。


「日向が事故に遭ったって。病院行くわ。」


ゆっくりと淡々とした口調でそう言ったすみれの母親は、寝ていた時の格好のままだったので、身支度を整えに自分の部屋に戻った。


簡単に身支度を整えたすみれの母親は、電話をしながら取ったメモを持って家を出ようとした。


「待って!お母さん。私も行く!」


すみれは玄関から出ようとしている母親に声をかけ、急いで必要なの物だけ持って追いかけた。


すみれは体調の悪い母親を一人で行かせるのも心配だったが、何より家で一人で待っているのが嫌だった。


二人が家を出た時には、夕方の雨はもう止んでいた。


すみれとすみれの母親の二人は、大通りに出てタクシーを拾った。


タクシーに乗って日向が運ばれた病院に向かう途中で、すみれは単身赴任中の父親にメールを打った。


 〝日向が事故に遭ったって。今からお母さんと病院に行ってくる〟 


すみれの父親からはすぐに返信があった。


 〝事故ってなんだ?何があった?日向は無事か?〟


 〝わかんない。さっき警察から電話があって。今タクシーなんだけど、お母さん何も言ってくれないし、聞いても答えてくれない。お父さん帰ってきてよ。〟


 〝わかった。すぐ帰るように手配するよ。すまんな、すみれ。母さん頼むな。〟


父親からのメールの返信を見て、すみれは大きなため息をついて呟いた。


「すぐ帰るって、何時になるのよ。」


すぐに帰る手配をする言ってくれた父親は、早くても夜中になるだろうと、すみれは思った。


すみれとすみれの母親は、事故に遭った日向の状態が全くわからず、不安でたまらなかった。


二人はタクシーの中で身を寄せ合って座っていた。


日向の運ばれた病院に着いたすみれ達は、あまり人気のない静かな場所の一部屋に案内された。            

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