第7話

ライブハウスの控え室で、透真はずっとギターを弾いていた。


そんな透真の姿を見て片山紫ゆかりは隣にいた青柳健吾に


「ちょっと何なの?今日のノア。何があったわけ?」


 と聞いた。


「さあな。でもあんなノア、久しぶりだな。ここんところのアイツの方がおかしかったのかもな。ウチの店に来始めた頃は、アイツずっとギター触ってたからな。」


 黙々とギターを弾いている透真の姿を見て、気持ち悪そうにしている紫とは違い、健吾は少し嬉しそうに言った。


 健吾は透真と一緒にバンドを組んでいる男である。


バンドのメンバーといっても主に二人で活動している。


健吾の高校時代のバンドの仲間も、仕事の都合がつけば一緒に演奏するが、そうでない時は二人でステージに立っていた。


 健吾は父親が営む楽器屋で働いている。


紫は健吾の高校時代からの恋人で、二人の付き合いは十年になる。 


 紫は会社勤めをしているが、健吾と透真がライブの時はバンドのスタッフとして手伝いに来ていた。


 健吾と透真は、健吾の実家の楽器屋に透真が客として来店し、ギターを弾いている透真に声をかけ、「一緒に組まないか」と誘った。


「最近アイツ、スランプ気味だったし好きにさせてやってよ。」


 健吾は紫に透真のことを放っておいてやれという風に言った。


「アズさーん!ノアさーん!そろそろお願いしまーす!」


 少し離れた所からライブハウスのスタッフが健吾の事をアズと呼び、リハーサルを始めるように声をかけた。


「ノア!リハ行くぞ!」


 健吾は透真に声をかけ、二人はリハーサルの準備を始めた。


「ノア、オマエ何かあったのか?」


 機材のセッティングをしながら健吾は透真に聞いた。


「いや、何て言ったらいいか・・・自分でもどうしたらいいのか・・・」


 透真は自分の気持ちを整理しきれず、すみれとの事をどう説明したらいいのか、わからなかった。


「女か?」


 健吾はニヤッと意地悪そうに笑って聞いた。


「まあ・・・でも相手のこと、何も知らなくて・・・」


「中学生かよ!紫が聞いたら大笑いするだろうな。」


 今まで恋愛で悩んだことがなかった透真は


 (本当にそうだな。ガキみたいな悩みだな。男いるみたいだし、もう関係ないか。)


 と心の中で自分に言い聞かせた。


「悩んでも良いけど、しっかりしてくれよ?お前モテるし、そこそこファンもついてるんだから。」


「アズは大人だね。紫の事ファンの子達知ってるけど、みんな応援してるし。」


「まぁタイミングもあるしな。俺は昔から紫と一緒にいるし。紫がいて当たり前の俺達だからなー。」


 二人は苦笑し、ギターを鳴らし始めリハーサルに集中した。

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