第2話 変わらないもの
変わらないものを求めて、好きでもないものに夢中なフリをした。誰かに合わせることで、自分を繕って、そんな自分の小さな綻びには、気付かないふりをした。
そうやっていくうちに、自分を忘れていた。そこに居たのは、ヒトというものになろうと空回りする、滑稽な人形。
気がつけば、この両手には何も残っていなくて、残されたのは空っぽの自分だけ。何も無くて、どうしようもなくて、寒空の下に飛び出して。
橋の上から見た先にあったのは、都会の夜。
オフィスビルや走っていく車、街の街灯にイルミネーション。一つ一つが重なって、うつくしい夜景を作っている。
このあかりの数だけ、ここには人がいる。
きっと、この美しい世界でも、近くに行ったら、嫌なこと、汚いことだって沢山あるのたろう。二度と同じ景色は見られない、そんな夜。遠くから見ているから、こんなに綺麗だけど。私のような弱い人間は、近くに行けば、あの光に耐えられないのだ。
人工的で、眩くて、だけどどこか儚げで。
それは、あの光のひとつひとつが、あそこにいる人の物語だからなのだろう。物語の数だけ光が集まって、私たちに、美しい世界を見せてくれる。色んな光が連なって、ひとつの街を作っている。
勿論、綺麗なことだけじゃないけど、それでも、遠くから見た世界は、やっぱり綺麗なものだから。
ここでは、星は見えない。あの明るすぎる光は、星の灯りを消してしまっている。でも、そんな人工的な光だからこそ、私は惹かれるのかもしれない。
あの夜景をつくる光は、私と同じ。作りもので、まがい物なんだ。でも、私はそんな光が好き。
だから明日も、この夜空の下で、あの美しい光を見よう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます