空が笑う

九条ねぎ

第1話 真美の朝

 太陽の匂いをめいっぱい吸い込んでから、真美の一日は始まる。

 今日もカーテンをあけて、目を閉じれば、ほら、まぶたの裏に、太陽を感じられる。昨日あった辛いことも、太陽なら、その出来事も含めて、真美を暖かく包んでくれる。仲のいい友達と喧嘩したこと、学校のうさぎが病気になったこと、昨日の夕ご飯に、苦手な小松菜があったこと。辛いことは沢山あるけど、嬉しいことも沢山ある。

 転校生と仲良くなったこと、飼育小屋のひよこが増えたこと、今日の給食が、大好きなハンバーグってことも。


 太陽って不思議だ。


 ぽかぽか暖かくて、心を照らしてくれる。

 太陽は、白い色なんだって。そう、真美の先生が言っていた。

 でも、真美は太陽は赤いと信じている。だってほら、人間の身体には、赤い血が流れていて、それは炎の色とおんなじで、だから、太陽の赤は、生きる色。

 太陽があるから、生きていける。だから、今日も太陽は暖かい。雨が降っていたって、分厚い雲が空を覆ったって、その遥か先にあるのは、やっぱり太陽なんだって。

 だから、太陽はきっと赤いんだ。


 さあ、今日も一日が始まる。

 今日は何をしようか。お日様の下で、鬼ごっこにかくれんぼをしたり、影踏みをするのもいいかもしれない。太陽の下で沢山遊んで、いっぱい日焼けをして、太陽の子になろう。そしたら、きっと風邪だってなんだってへっちゃらな、強い子になれる。

 真美だってお母さんだって、お父さんだって先生だって。大人だって子供だって、みんな、太陽の子どもだから。


 階段の下で、お母さんが呼んでいる。今日の朝ごはんはなんだろう。外は相変わらず、太陽の日差しが降り注いでいる。真美は部屋を出ると、階段を駆け下りた。急いでリビングへと行き、朝の挨拶。


「お母さん、おはよう!」


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