19
「とりあえずアホはほっといて」
「アホ!? アホってオレっちのこと!?」
カービーがその場を仕切りなおそうとする。
「こっちから聞いといてなんだが、随分とぺらぺら喋ってくれるじゃねぇか。俺たちは敵なんだぜ?」
「……確かに喋り過ぎましたね。反省します」
終始クールな表情のシサキが僅かに落ち込んだ表情になった。
「シサキは悪くないって! アイツらに乗せられちゃっただけだからッ!」
「ですが……。シルバー隊長に叱責を受けてしまいます……」
「黙ってればバレないから!! それにほら!」
ミサキはシサキを励ましながらカービー達を指差す。
「あの3人倒しちゃえばチャラになるから!」
「……簡単に言ってくれんじゃねぇか」
カービーは指をポキポキと鳴らす。既に十分な休憩は取れたようである。
「コンビネーションが武器って言ってたけど。……オレっち達だって負けないぜい?」
「うん。いつもと違って素手だけど……。さすがに3対2で負けるわけにはいかないよ」
ケイン、勝平も腕を大きく回して準備体操をする。
「な、なによ! さっきまで負けてたのに、急に勝てるわけないでしょ!」
少しだけ、雰囲気の変わった3人を見て、ミサキがたじろいでいる。
「ミサキ、油断しないでください。さっきまでと空気が変わりました」
シサキも構えを取る。それを見て慌ててミサキも構える。
「……なんでしょうか。貴方方は先ほどまで手を抜いていたのですか?」
シサキが不服そうにそう訊ねた。
「そういうわけじゃねぇさ。……ただな。お前ら、そんなに実戦経験ネェだろ?」
カービーがニヤリと笑う。そう言われたシサキの眉がピクリと動き、ミサキはわかりやすく身体全体がビクッとなった。
「な、な、なにが!?」
「……そうですね。確かに今回が初めての実践……。ファーストミッションですが」
「アッハッハッ!! そうだろうなぁ!」
シサキの答えを聞いたカービーが大笑いをした。まるでそう返されるのがわかっていたかのように。
「オメェらの攻撃は『キレイ』過ぎんだよ。空手の型みてぇによ。バレエでもやってんのかってくらいに」
「……なにが言いたいのですか」
明らかに不機嫌なニュアンスで聞き返すシサキ。
「教わった通りの動きしか出来ねぇ奴になぁ。……この俺は倒せねぇってこった!!」
途端、いきなり距離を詰めてきたカービーがミサキの腹部目掛けて蹴りを打ち込んできた。
「えっ!? きゃ────」
「ミサキ!!」
なんとなく、二人の会話を聞いて、ボーっとしていたミサキは反応が遅れる。だが、蹴りが当たる直前でシサキがミサキの腕を引っ張り、無理やり避けさせる。
「はい、いらっしゃーい」
「あっ」
二人そろって横方向に移動したミサキとシサキ。二人ともカービに注目していたためか、背後の警戒がおろそかになっていた。
「痛いと思うけどゴメンね!」
シサキの背後に回り込んでいたケインが片腕をシサキの首に巻き付ける。そのまま首絞めに移行する────わけではなく、大きなモーションで首投げを行った。
「ッ!!」
「わわわっ!!」
シサキがミサキの手を掴んだままだったので小さな少女二人の身体は半円を描くように宙を舞った。
(しまった……! こんな無防備なときに────)
宙を舞っているミサキは何かを恐れて受け身を取ろうとする。
だがそのとき
「オラッ!」
再び凄い勢いで突っ込んできたカービーがシサキ目掛けて蹴りを放つ。身体が浮いているシサキが避けられるわけもなく、やむを得ずミサキを放して、両腕を胸の前でガードの構えを取る。
「ゥゴッ」
瞬間、シサキの両腕をすさまじい衝撃が襲った。……いや、それは両腕どころではなく、衝撃は貫通してシサキの胸部、もっと言うと上半身全体を包んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます