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「戦ってもらうって……。危なくないですかこれ! バッサリいっちゃったら死んじゃいますよ!」

「オレは生き返れるしヘーキヘーキ」

「私の方ですよ! 黒川君も刀持ってるじゃないですか!」

『その辺の心配はいらない。両方とも刃の部分には安全装置をつけている。思いっきり切りかかっても怪我はしないよ』

「本当ですか……?」

『……まあ切り傷はないだろうが、打撲は覚悟した方がいい』

「やっぱり危ないじゃないですか!」

そんな必死にマーベルに抗議するソフィアを見て、雫がため息をついた。

「やれやれ……。ソフィアさんの覚悟もその程度だったとは……」

「な、なにがですか?」

雫が呆れたような口調で続ける。

「さんざんオレたちの仲間になりたい、理不尽な目に遭っているオレを助けたい、とかなんとか言っておいて模擬戦程度でこの弱音とは」

「な……! ば、バカにしてるんですか黒川君!」

ソフィアが怒ったようにそう言った。

「そうだね。それもあるけど……」

すると雫はいきなり真剣な表情になった。

「実際の戦闘になったらホンモノの刃物や銃火器と戦うことになるんだ。打撲程度じゃすまないよ?」

「うっ……、それは……」

現にソフィアは目の前で雫の腕を切断される光景を見ている。雫の言葉が脅しではないことくらいはわかっていた。

「まあこれからもソフィアさんが狙われる確率は低いだろうけどね。でももし狙われたりしたら……。黙って殺されるの?」

「……」

ソフィアは雫に言われた言葉を受けて、考え込んだ。自分に足りないのはなにか。それは覚悟か勇気か。好奇心から首を突っ込んで今の状況になっている。そのことについて後悔はあるのか。ソフィアは自分自身に問うた。

「……嫌です。死にたくありません。何が何でも抵抗します」

もしかしたら後悔は少しばかりあるかもしれない。だが、ここまできた以上、ソフィアにもプライドがあった。

「それでいいんだ、ソフィアさん。自分の身は自分で守らなきゃ」

雫はニヤリと笑った。

「……黒川君。もしこの模擬戦で黒川君が納得いく戦いを私が出来たら、黒川君がどうしてこんな状況になったのか教えてくれますか?」

「……別に隠してるつもりはないんだけど。言う機会が無かっただけで。……まあそもそも」

雫は手に持っている刀を構えなおし、臨戦態勢のポーズになった。

「ソフィアさんがオレを納得させる戦いが出来るとは……、思えないしねっ!」

雫はいきなりソフィアの元まで突っ込んで行った。そのままの勢いで右手に持っていた刀をソフィアに向かって振り下ろす。

「!!? ちょ────」

ソフィアは慌ててヴァルハニーロを頭上で水平に構える。ガキンッ、という音とともに刀とヴァルハニーロがぶつかり合う。

「ほらほら横横!」

雫が今度は左腕で持っている刀を大きく振りかぶった。そのままソフィアの脇腹辺りを薙ぎ払うように刀を振り抜く。

「ッあ……!」

刀による薙ぎ払いをまともに受けたソフィアは三メートルほど吹っ飛ばされる。あまりの衝撃と痛さに悲鳴もまともに出なかった。

「い、いきなり……何を、するん、ですか……」

ソフィアは倒れたままの状態で声を発した。殴られた脇腹を抑えている。

「不意打ちってやつだよ、不意打ち。実際の戦闘で試合開始!、なんてゴングが鳴るわけないじゃない。臨機応変に対応しなきゃ」

『鬼かお前は』

スピーカーから聞こえるマーベルの声は呆れたようなトーンになっていた。

「だ、だからって……。こんな……」

今までの人生で暴力なんてものを受けたことが無いソフィアにしてみれば、頑丈な鉄の塊で殴られる痛みなど予想できるものではなかった。あまりの痛みに涙すら出てくる。

「おやおや~? もうギブアップかいソフィアさん?」

雫はおちゃらけた態度でソフィアを挑発する。

「こ、この……!」

そんな雫の態度を見て、ソフィアは怒りを覚えた。心優しいソフィアではあったが、殴られて怒りを覚えないような気弱な性格でもなかった。

ソフィアはヴァルハニーロを杖のようについて、立ち上がった。まだよろけてはいるがちゃんと自分の足で立てている。

「もー怒りましたよ黒川君!! 女だからってなめてるでしょう!?」

「いやいや別にそんなことはないよ。ただ……温室育ちのお嬢様にはこれ以上の運動は厳しいんじゃないかなー、ってねぇ」

「バカにしないでください!!」

今度はソフィアが雫に向かって駆け出した。雫との距離が近くなったところでヴァルハニーロで横薙ぎをする。

 が

「どうしたのソフィアさん。それじゃあ棒で殴っているだけで、有効的な攻撃にはならないよ?」

ソフィアのヴァルハニーロは棒立ちしていた雫に当たった。だが距離が近すぎたせいか、それは刃の部分ではなく、柄の部分であった。

「くっ……!」

ソフィアは一度後方にジャンプで下がった。

「おっと……。避けられちゃった」

ソフィアがいた場所に向かって雫が振り下ろした刀が空を斬った。

雫の攻撃を見てかわしたわけではないが、一回目の攻撃で学習したソフィアはなんとなくだが予測して回避していた。

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