22

「はえ~、これが全部神機なんですね……」

初めて見る物に気圧され、ソフィアはマヌケな声しか出なかった。

「どうだい? 凄いだろう」

そのままの通り凄い、という感想しか出てこなかった。全部どうなっているのか想像がつかなかったが、特に勝平の神機と言っていた物がどういうものかわからなかった。

「もういいかな、本題に移っても」

「あ、はい」

ボケーっと神機を眺めていたソフィアであったが、マーベルの一言でハッとした。

「ソフィア・ヴェジネ。まず先にこれを渡しておく」

そう言ってマーベルが近くの机の上に置かれていた金属製の箱に手を置いた。箱の大きさは二メートル以上あるようだった。

「な、なんですかこれ……」

ソフィアが恐る恐る箱に近づいていった。なにか妙なプレッシャーのようなものを箱から感じた。

「開けてみるといい。私からのプレゼントだ」

「……」

ゴクリ……、とソフィアが喉を鳴らして箱に手をかける。そのまま恐る恐る蓋を開ける。

「こ、これは……。薙刀……、いや、槍ですか……?」

箱の中には二メートル以上はあるであろうサイズの槍のようなものが収められていた。外見はかなり派手な装飾をしており。重量感があった。刃の部分が左右非対称となっており、全体の半分近いところまで刃が伸びている。

「持ってみたまえ」

「……」

促されるままに、ソフィアは慎重に槍に触れた。最初に感じた感触は冷たいというものだった。そのまま持ち手であろう箇所まで撫でるように指を動かす。不快感の無い、非常に滑らかな触り心地であった。

「それじゃあ……。持ちますね……?」

誰に確認しているのか、ソフィアがそう呟いた。そのまま両手で槍を握る。

「よっ……、ととと」

ソフィアは槍を持ち上げた拍子に数歩後ろによろめいてしまった。

軽い。見た目からは想像できないほど軽かった。てっきり自分一人では持てないほど重い物をソフィアは想像していた。

「どんな感じ?」

雫がソフィアにそう聞いてきた。

「どうと言われましても……。思ったよりも軽いなぁ、としか……」

槍を軽く上下に振ってみる。やはり軽い。

「……やっぱりアイツの言った通り、神機適合係数が高いのか……。あーあ。なんかもったいなー」

雫はボソッと呟いたかと思うと、不貞腐れたように唇を尖らせてそっぽを向いた。

「それが君の神機になるものだ。名前はヴァルハニーロという」

「ヴァルハニーロ……」

マーベルに名前を教えられ、ソフィアは改めて手に持っている神機────ヴァルハニーロを見た。なぜだか不思議と手になじむような気がした。

「……か、カッコいいですね……」

ソフィアはまだ自分が未知なる物を持っているという実感がなく、変な感想を言ってしまう。

「なんだよ~。せっかく貴重な神機あげたのに感想それだけかよ~」

雫が不満な顔つきでまだ唇を尖らせている。

「そ、そんなこと言われましてもまだ実感が……」

「どうした、それでは不満かな?」

「い、いえ……。武器って聞いたから銃的な物かと思ってたんですけど、槍なんですね」

「ああ、別にそういうのもあるが。……まあなんだ。お試しだとでも思ってくれ」

「はあ」

冷静に考えると槍すら持ったことが無いのに、そもそも銃なんてさらに使い方がわからない物を扱える気がしなかった。

「さあソフィアさん。自分の相棒に挨拶も済ましたことだし、さっそくテストといこうか!」

「て、テストですか?」

雫が腕を捻ってストレッチを始めた。なんとなくそれを見てソフィアは嫌な予感がした。

「そう。オレと模擬戦をしてもらうよ」

雫はソフィアに向かってニヤリと笑った。

 ◇

『それじゃあ準備はいいかな?』

部屋の天井に付けられているスピーカーからマーベルの声が響く。

「よくはないんですけど……」

現在、ソフィアは研究室から地下に移動し、だだっ広い部屋の中にいた。先ほどまでいた研究室とは異なり、物はなにも置かれていなかった。床も天井も壁も白い頑丈そうな造りをしていた。

そこの真ん中付近に、体操着に着替え、不安げにヴァルハニーロを握りしめているソフィアが立っていた。

そしてそのソフィアの前には同じく体操着に着替えた雫が立っていた。

「さっきのと同じなんですね」

「これかい? さっきはどっかのアホのせいで使う機会が無かったけどね」

そう言って自分の装備を見せびらかすように両手を広げた。

雫の両手には先ほどガラスケースの中にあった刀をそれぞれの手に握りしめていた。

『二人ともいいかな。これから二人には私が止めるまで戦ってもらう』

再びマーベルの声が響いた。

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