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直後、上空からカービーたちと包帯の人物の間にある人物が降ってきて、着地を決めた。
「私を忘れるとはいけない子たちだ」
「「「大佐!?」」」
空から現れたのは美智であった。ドヤ顔を決めている。
「フフフ……。さすがに屋上から飛び降りるのは勇気がいるな。出てくるタイミングを何回か逃してしまった……」
「フツーに来りゃあいいじゃないっすか」
「それでは先輩として示しが付かないじゃないか!」
「いや……。大袈裟な登場すればいいってものでもないような……」
どこか呆れた様子で美智を見ている男三人。
「アンタはサムライ女!! ちょうどいいわ! このあいだの借りを返してあげる!!」
背の低い少女は怒り心頭といった様子でハンマーを振り回している。
「おや? イーリス君じゃないか。気付かなかったよ」
「ハァ!? アタシの背が低いって言いたいの!?」
背の低い少女────イーリスは悔しそうに地団駄を踏んでいる。その衝撃で地面のコンクリートに大きなヒビが入り、学校全体が揺れた。
「よせイーリス。この世界は脆い。あまり『傷』をつけると後で面倒だ」
「だって、バンテージ!! アイツらがアタシの事をバカにするからッ!!」
包帯の人物────バンテージはため息をつくと再び機械をいじり始めた。
「……君も大変だね、バンテージ?」
「……縦社会に属している以上、下の面倒は見るしかない」
機械をいじりながらだが、バンテージが返答した。先ほどまではケインたちに冷たい態度を取っていたバンテージであったが、どこか美智とは通じるなにかがあったのかもしれない。
「……よし、ここにするか。イーリス、移動するぞ」
「早くしてよ! コイツ等ブッ飛ばさないとアタシの気が晴れないわ!!」
バンテージがそう言った途端に中庭────正確に言うとケインたちも含めてその場にいた全員の足元が光り始めた。
「やっぱりこうなるんだね……」
「コイツ等から仕掛けてきた以上、逃げられねェよ。覚悟決めろ」
嫌そうな表情の勝平を見て、発破をかけるようにカービーがそう言った。
「……今更だけど、雫君の異世界渡航機に比べて彼女たちの異世界渡航機の方が揺れが少ない気がするね」
「それ大将が聞いたらショック受けるから黙っててくださいよ大佐……」
ケインがそう言い終わる瞬間に六人の姿は消え、中庭は再び誰もいない空間となった。
◇
「……なんだァ? この世界は」
カービーが次に瞬きしたとき、目の前の中庭の景色は一転しており、辺りには瓦礫が散乱していた。
「な、なんか廃墟……的な物があちこちにあるけど……」
勝平がオドオドしながら言っているとおり、周囲には明らかに人工物とわかる建物の────、残骸がそこら中にあった。
「誰も住んでない世界なのかしらん? なんか不気味な世界っすねぇ……」
ケインがキョロキョロとあたりを見渡す。空は灰色にくすんでおり、視界に入る限り人の姿はなく、朽ちて時間が経ったとわかる廃墟しかなかった。
「核戦争でも起こった後みたいな世界じゃないか!!」
一人、なぜかテンションが上がっている美智が興奮して目を輝かせながらそう言った。
「そうだな。ここはアルノード同士の戦争で滅んだ世界だ。……もっとも『核爆弾』とかいう『おもちゃ』で滅んだかは知らないが」
「「「ッ!!」」」
カービーたち男三人は声のした方を振り向く。そこにはバンテージとイーリスがいた。一瞬の異世界移動だったが、周りの景色に気を取られて二人の存在を忘れてしまっていた。
「まあ……。もしかしたらお前たちの住んでいる世界の未来の姿かもしれないが」
バンテージはそう言うとニヤリと笑った。それを見てカービーは「ペッ」と唾を吐いた。
「オイオイ、冗談なんて言えるのかよ。……クッソつまんねぇけど」
そう言われたバンテージの眉毛がピクリと動いた────ような気がした。包帯とマントのせいで表情はわからない。
「……これから死ぬやつにこれ以上話すこともないだろう」
バンテージは刀を試すように二、三回素振りをした。
「そっちの準備なんて待たないわよッ!!」
それが合図かのように、待ちきれない様子だったイーリスが美智目掛けて突っ込んでくる。
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