7

「な……! 何しやがる!!」

「フン。私をほっとくとは良い度胸だぜ」

どこか怒った様子のテトラは片足を上げ、カンフーの構えのようなポーズをした。威嚇しているつもりなのだろうか。

「クッ……! コイツといるとどうも調子が狂う……」

すぐさま起き上がった雫はいつのまにか腰に携帯していた刀を引き抜き、構える。

「やっと遊ぶ気になったんだぜ? そう来なくっちゃ」

「いや、オレはずっとヤル気だったけど……」

テトラの方を気にしながら、雫は吹っ飛ばされたときに身体に付いた砂を払いのけている。テトラの方はテトラの方で構えを左右で変えながら「アチョー」と言っていた。

「……?」

そんな二人の様子を見てソフィアは首を傾げていた。雫の方はテトラを警戒しているようであったが、それにしてもこのあいだの包帯女と呼ばれていた精霊と比べると二人の間の緊張感はどうも薄いように感じた。命を狙っているというわりにテトラの方は完全にふざけている。雫の方もいちいちテトラのボケにツッコミを入れる余裕を見せていた。

何なのだろうかこの二人は。

「ソフィアもほら。武器を構えて、私と遊ぶんだぜ!」

ボーっと考え事をしていたソフィアはテトラに声をかけられてハッとする。

「え、えっと……。私武器なんて無いんですけど……」

「ええっ!? そうなのか? ……ダメなんだぜ雫。ちゃんと護身用の神機を渡しておかないと」

「……その人を巻き込む気は無いからな。必要ないだろ」

「でもこうやって無理やり巻き込まれたら否が応でも武器は必要なんだぜ?」

「お前らが巻き込まなければいいだけだろッ!!」

「そりゃあ私みたいに話が通じればいいけど、バンテージとかフォルトみたいないきなり襲ってくるタイプなんかどうするんだぜ? ソフィアを逃がしてる余裕なんかないだろ?」

「そ、それは……!」

反論が出来ないのか雫が返答に困っていた。

「そうですよ黒川君! 私にもシンキを持たせてくれれば安全ですって!」

思わぬ見方が現れたからか、ソフィアも雫に畳み掛ける。

「いや……。しかしだな……」

二人から責められ、強情に突っぱねていた雫も考え込むように首を捻る。

またしても、闘いが始まりそうな緊張感はどこかへと行ってしまった。

「お前に関わった以上、もうどうすることも出来ないんだから、御守り代わりにでも神機の一つくらい持たせた方がいいんだぜ」

「そうですそうです!!」

テトラの意見に同意するようにソフィアがウンウンと激しく頷く。

「……ひ、一晩考えてからにする! 今はそうとしか言えん!」

雫はやけくそのようにそう言った。

「「イエーイ!」」

テトラとソフィアは笑顔でハイタッチを交わす。騙したのどうのこうのといった怒りはどこへ行ったのだろうか。

「これで私も正式にお友達です! テトラさんのおかげですよ! ありがとうございます!!」

「礼はいらないんだぜ! これでソフィアも一緒に『遊べる』な!」

手を取り合ってその場でダンスのようなスッテプを踏むソフィアとテトラ。

その真上の上空から何かが落下してきていた。

「……あれ? そう言えばテトラさんの持ってた武器は?」

両手を繋いでいるテトラを見て、さっきまで持っていた凶器が無い事に気付いたソフィアが訊ねる。

「ああ、さっきお前に体当たりされた直後に邪魔だったからお空にポーンッて投げたんだぜ!」

とテトラが言った直後

ドグシャ、という重い物で生肉を叩いたような音が響き渡った。

「……へ?」

ソフィアの目の前、具体的にはテトラの頭部付近から赤い液体が飛び散った。

あっけに取られるソフィアを尻目にテトラの身体がその場に崩れ落ちる。

「キ────キャァーーーーーーー!!!!」

状況を理解したソフィアが大絶叫する。


空から落ちてきたモーニングスターがテトラの頭部を砕き、突き刺さり、爆散させていた。

モーニングスターが頭部に突き刺さったまま、テトラは倒れ込んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る