20
◇
「いやー、まさか二人が知り合いだったとは」
「私が一番驚いてるんですけど……」
そう言ってソフィアは横をチラリと見た。ソフィアの横には美智が座っていた。
「いやいや、私も驚いてるさ。こんな形で再開することになるなんて」
前髪を掃いながら、どこかわざとらしく美智がそう言った。
そんな美智のことをカービーと勝平がジトーッと怪しむように見ていた。
「本当っすか? なんかいろいろと知ってるような感じだったじゃないっすか」
「そうですよ。ヴェジネさんに名乗るときも自分は気付いてるふうでしたし」
すると美智はやれやれという感じに両手でジェスチャーをした。
「バレてしまったいるようだね。……ソフィア君のことは『知っている』よ。もちろん、転校してくることもね」
「……そもそも大佐とソフィアさんはどんな関係なのさ」
雫も怪しむように美智に見つめる。「そんなに見つめられたら照れてしまうじゃないか」と冗談を言っている美智だが全員にスルーされる。
「私とミッチャンは────」
「幼馴染だよ。八年近く会っていなかったけどね」
代わりに答えようとしたソフィアの言葉を遮って美智が自分で答える。
「はえ? 大佐とソフィアちゃんが幼馴染? だったら────」
「雫とヴェジネも知り合いなんじゃねぇのか?」
こちらもケインの言葉を遮る形でカービーがそう言った。
「……確かに八年前って言うとオレと会っていてもおかしくないけど……」
雫が考え込むように顎に手を当てて俯く。
「ちょ、ちょっと待ってください。それってどういうことですか?」
ソフィアが混乱したように手をアワアワさせている。当事者の一人であるが、状況がよくわかっていないようであった。
「オレも大佐とは幼馴染なんだよ。ちょうど八年くらい前に親同士の繋がりで知り合った」
「えええええ……?」
雫とソフィアは同時に美智の方を向いた。「「どういうこと?(どういうことですか?)」」と美智に尋ねる。
「おおっ。浮気したときに尋問される感じはもしかしてこんな雰囲気なんだろうか。ちょっとゾクゾクしてしまったよ」
「いや、ふざけないでいいから」
チェッ、と拗ねたように口を尖らせる美智。いい加減にこの場が自分の発言を待っていると感じたのか、口を開く。
「雫君とソフィア君は今回が初めましてなのは違いないはずだよ。約八年前に知り合ったときには二人とも微妙に時期がずれてたんだ」
「……本当にそんな単純なことだったの?」
再び雫が怪しむような目つきで美智を見る。
「どうしたんだい、雫君? なにか疑っているようだけど」
「……大佐はどうやってソフィアさんと知り合ったのさ」
「……親同士がもともと友人だったらしくてね。それで子供の私たちを会わしたんだよ」
「そ、そうですよ。私もパパからそう聞いてます」
ソフィアが思い出したようにそう言った。
「その親同士の友人関係ってのはオレのクソ親父も入ってるんじゃないの?」
「……そうだね。ブラックさんも仲良かったみたいだね」
「なのにオレとソフィアさんは会ったことがない。相手の話すら聞いたことがないんだ。妙だと思うのが普通じゃないか?」
雫が言った『相手の話すら聞いたことがない』といった部分でソフィアがなにか言いたそうな表情になったが、誰も気付かなかった。
「……そうだね。確かに妙だ」
なにか誤魔化すように顔を背けながら美智がそう言った。雫は美智の正面まで歩いていった。
「大佐。オレと貴女は普通の『ニンゲン』じゃない。精霊事情に足を突っ込んでるのは同じだ。……しかもそれは親にまで関係している。知ってることを話してほしい」
「……どうしてそこまで気になるんだい?」
「これ以上一般人のソフィアさんを巻き込まないようにするためだよ。なにか妙なつながりがあるんだったらここで絶っておきたい」
真剣な表情で話合っている雫と美智をみて男子三人が「修羅場だー」「おっかねぇな」「僕たちが入る隙がないね……」と好き放題言っていた。
「……?」
当事者であるはずのソフィアはすでに二人が何を話しているのかわからなくなっており、絶賛混乱中であった。フクロウのように首を左右に捻っており、頭を使い過ぎて鼻血をふきそうであった。
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