それは、事後。

 二連続の説教を終えたのちにぐってりと床に倒れ、ひなは足が痺れて悶絶し、ゆたゆきはなにも言わずにただ伏せている。

 そんな二人を見たはなよいは、ふうっとため息をついて。



「だらしないったらありゃしない……」



「この……お」



「あぁ?」



「ナンデモナイデス」



 ついさっきそれを言ったせいで叱られたというのに、ゆたゆきが懲りもせず同じ言葉を使おうとしたが、瞬間にギロリとはなよいが睨みを聞かせたお陰ですぐにまた伏せて黙り混んだ。



「ねぇよーちゃん仕事は……?」



「しゅさがに任せて来た。」



「いいのそれ……?」



「お前らがいつまでたっても言うこと聞かないからだろうが。少し位守ろうとしろこの阿呆」



「俺関係ないじゃん……」



「ゆたゆきへの注意が緩いからだ」



「空気ってあんじゃーん……?」



 はなよいが変に速く仕事から帰ってきたのは、簡単に言えば一緒にいたもう一人の妖怪に仕事を押し付けてきたからだった。

 巻き添え気味に説教を食らったひなは、そのことへぼやいたが、はなよいによってすぐに一刀両断されてしまった。



「……あ、そーだ。そういえば次さがくんか。」



「何が?」



「いっちゃんに会うの」



「あー……大丈夫かな……」



「まぁ、いざというときは押さえ込めば……よろしくねよーちゃん」



「面倒な……」



 さがくんもとい“しゅさが”という事務員の一人である妖怪のいつもの様子を思い浮かべる三人。そしてそのあと、琴乃と会ったときに彼がどうなるかを思い浮かべたとき、全員ストーリーが合致していた。

 そしてそのストーリーが現実とのれば、中々な馬鹿力を持つしゅさがを押さえ込むことになり、一応男であるひなは事務所で一番力が弱いので論外として、ゆたゆきとはないよでは力ははなよいの方が強い。ということで面倒な押さえ付けを全て丸投げしたゆたゆき。

 と言っても結局ははなよい一人で対処できるようなものでもないので、実際には三人がかりで押さえつけることになるだろうが。



「来たばっかりのころはあんなに可愛かったのになぁ……」



「怯える子犬みたいでねぇ……」



「何年前の話をしているんだお前たちは…」



「もう……三年以上前かぁ……時が経つのははやいねぇ……」



「ねー……」



 ぼんやりと思い出に更け始めたゆたゆきとひなに、はなよいはもう面倒になってきて突っ込むのを諦めはじめていて。

 そんな感じに二人が虚空を見つめているうちに、部屋の扉が開いて優斗がひょこりと顔を出していた。



「んぁ……ゆうと~……足痺れた助けてぇ……」



「主くん助けてよーちゃんが虐めるー……」



「虚言を吐くなこのへたれどもが」



「ちょっとひどすぎない……?」



「足痺れてんのほんとだしー……!」



「あー……お疲れ様二人とも……。はなよいもありがとう。」



「いえ。」



 未だにぐったりと倒れ込んでいる二人を見て、何となくの状態は把握できた優斗。ずっと足が痺れたと呻いているひなに手を差しのべると、横から最初はズルーイと聞こえてから、お前は自分で飛べ、という声。そしてそのあと何回かの会話ののち、何故かゆたゆきがはなよいに投げ飛ばされていた。



「はなよい……?」



「あやつが月様に起こしてもらいたいと五月蝿かったので代わりに起こしてやっただけです。」



「そ、そっか……」



「ちょっと起こすとは違った気がするけどね……?!」



「ゆーと……俺お姫様抱っこなんて恥ずかしい……」



 投げ飛ばされ、“うおわぁぁあぁああぁ?!” と叫んで部屋の壁に突進したゆたゆきは、空中でブレーキをかけたのでギリギリ壁に衝突せずに済んでいた。

 優斗に起こされたあと、立てないと言ったせいで取り敢えずお姫様抱っこをされが、ひなとしては少し落ち着かないものだったようで。顔を両手で覆いながら優斗に訴え、やっと近くの椅子に座ることができた。ゆたゆきがズルいと叫んでいたのは気にしないことにして。



「あー……足イタイー……」



「結構ずっと痺れてるもんねぇ」



「もうやだこれー……アタタ」



「叩いたら治る?」



「悪化するからヤメテ」



 恐る恐る足を床につけ、ついた瞬間のピリッとした痺れを乗り越えてから、ぐったりと椅子の背凭れに体重をのせた。

 そんなひなの側に寄り、しゃがみこんでから少しエグいことを発したゆたゆきは、ガチトーンと早口で返したひなを見てこりゃダメだなと苦笑しながら立ち上がった。



「そうだ。明日も糸印さんが来るから、そのときにしゅさがと会ってもらって、最近来た依頼を一緒にやってもらう。ってつもりなんだけど、大丈夫……」



「あー……」

「うんー……」

「……」



「…ではないよね……」



 ついさっき話したことがすぐさま現実となりそうで、三人とも言葉は違えど優斗から目を反らして微妙な反応をして。

 優斗も三人と同じような予想をしていたので、そうなる気持ちはわかっている。とはいっても、琴乃としゅさがを会わせないという選択肢はないのだ。

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