第八章 皆と文化祭

高校最初の文化祭

 時は過ぎていき秋の深まりを一層感じる事の出来る10月の美術室。

一同といっても、真心、空、菖蒲の三人だけであるがは、魔法瓶に詰めて持ってきていたのであろうお茶をすすって、ゆっくりしていた。


「美術部は特に出し物をしたりはないんです?」

「去年はやりましたけど今年は何も考えてませんでした、部活の存続で手一杯でしたから、その分クラスの出し物をお互い頑張りましょう、真心さんの所は何を?」

「私達の所は焼きそばを売る予定ですよ、その……メイドの姿で」

「メイド服のレンタルなんてあるんだね、予算の関係上ウェイトレス限定だけど」

「そうなのね、空さんは着られるんですか?」

「えっと、はい、私は着ます」

「なんで私には聞かないんですかー」

「「…………」」


 話題は今月末に行われる文化祭、この学校では10月の末に三日間盛大に行われる予定だ文科系の部活の活躍どころともいえるが真心達美術部は今年は人数もいないので何かをやる事無くクラスの出し物に注力するみたいだ。


 そんな感じだが、では真心と空は何をするかと言えばどうやら焼きそばを売るそうで、というのも何人かあの夏祭りに遊びに来てる時に俊介の焼きそば作りを見てたのか焼きそばを作ろうと提案、そしてさらに悪ノリが加速、メイド服をレンタルしてそれでウェイトレスをして貰おうと言う運びになったのだ。


 空はそのメイド服を着る事が決定しているがでは真心はと言えば。そういったレンタルのメイド服は真心のような低身長の女性に合わせた物が無い。おおよそ150~160の女性に合わせた物が大半だ。二人はそれを分かっているが為に無言、真心も一言文句を言って、頬を膨らませるに留まる。


「そういう菖蒲先輩の所は何をするんですか?」

「私の所は人間でストップモーションアニメというのをやってるんです、夏休みの間もコツコツ取ってたんですよ」

「ほへー、何それ?」

「今じゃもう見ない技法ですからね、えっとですね」


 菖蒲のクラスでは学校全体を用いたストップモーションアニメを作る企画を立ち上げており、夏休みの誰もいない校舎などを利用して色々撮影してたとか。

ストップモーションアニメ、アニメーションの一種でコマ撮りとも呼ばれる。

かつては非人間的キャラクターなどを動かすときによく用いられたもの。

 静止している物体を1コマずつ動かし撮影し、あたかもそれ自身が動いてるかの様に見せるものだ。某恐竜映画に始まったCG技術の目覚ましい発展と共に消えていこうとしている技術、ちなみに起源は20世紀初頭とかなり歴史ある技術。

 こんな説明を菖蒲が真心と空にすれば関心の声を出す。


「その技術ならあそこの虎徹やシャルルの人形でも映画が撮れます?」

「できると思いますよ、今度作ってみます? 今年は無理でしょうけど」

「すごい楽しそうですね」


 真心が美術室に飾られた紙粘土を指さす、そこには刀を構える凛々しい虎徹と数多の猫とゴーレムに囲まれる杖を振るうシャルルの姿が存在した。

 菖蒲は出来ると思うと答える、さすがに今年は時間も無いので無理と答えるが来年は美術部として何か活動が出来ればいいなと三人が笑い合う。


 そんな三人の美術部の美術室の扉が音を立てて開き一人の美女が入ってくる。


「はぁい、真心ちゃん、今日も元気かしら?」

「あ、凛子さん、こんにちはー」


 この高校の生徒会の会長にして生粋の同性愛好者、百合野凛子であった。

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