勝つためには

 学とのダンジョンバトルの後の真心は自室の畳の床に体育すわりして俯いていた。

時刻は夕方、そろそろ夕飯時であった。


「元の主殿もそうだが、何と卑劣漢の多きことよ」

「これでは真心様があまりにもお可哀想です」

「完全にいじけちゃってるっすもんね」


 そんな自室に集まるはバトルの後、真心を慰めながら自室へと戻って来たドラゴンとシスタ、そしてお土産のウサギ肉を持って来たでゅら娘であった。真心は戦意喪失といった感じで俯きいじけてしまい隅っこで小さくなっていた、シスタ達の言葉にも反応しない。


「お肉食べれば元気出るっすよ、ほら兎肉とシャルルっちの野菜でシチューでも」

「うん」

「それでは、食事の準備をします」

「ふむ、妾も手伝わせてはくれぬか? シスタよ」

「では、野菜を切る所から」


 でゅら娘の食事をしようの言葉に小さく縮こまったままであるが返事をする。

この自室の別の部屋にはキッチンとある程度の食材をしまっておける倉庫をでゅら娘の提案によって、シャルルが勝手に作っていた、それ以降、夏休み中はこちらで食事をする事の方が真心にとっての日常になっていた。


「真心様元気出すっす、今回は負けちゃったすけど、まだランキングは下がってないんすよね、そいつは卑怯な方法でしか勝てない三下だったんすよ、あたしらが一緒なら真心様は絶対負けないっすから、ね」

「うん」

「真心様が元気ないと、皆心配しちゃうっすよ、笑顔で元気でいてくれないとっす」

「うん」

「ほら、笑顔っすよ、え・が・お!」

「ひ、ひっはらないへよ」

「真心様、めちゃほっぺたつるつるぷにぷにっすね、いつまでも触ってたい」

「おい、でゅら娘、貴様、何をうらやm……けしからんことをしとるのじゃ」

「すみませーん、真心様どうっすか? 元気出たっすか?」

「うん十分出たよ」


 でゅら娘が頬を引っ張り、無理やり笑顔を作るなど励ましにより真心が復活する

それをシチューの鍋を持って来たドラゴンは羨まし気に見るのであった。

しばし4人でシチューを堪能する。


「でも、その数でしたっけ? マナーもモラルもへったくれもない奴っすね」

「そうだね、でも、それくらいしないとダンジョンバトルは勝てないのかもしれない。私だって大勝した時は少なからず誉められる内容ではなかった、そういう意味では大声で卑怯だ卑劣だとは言えないんだ」


 真心が今まで戦った相手で大勝した経験は凛子との戦い、泥助との戦いそして犬山との戦いだ。凛子には毒や夜襲、鳥羽との戦いはマッチポンプ、犬山とは反則寸前。

最近ではダンジョンを爆弾を粉々にするなども行って来た。

 真心の戦いはどれも清廉潔白かつ正々堂々勝った戦いだけではない。


「数さんは持てる全てを使って勝ちにいった、それに条件は一緒だったんだ、私もシスタに同じことをさせれば勝っていた」

「そうでございますね」

「主殿も意地悪かろうと勝利の為に卑怯な手を使うのかの?」

「そうは言ってない、ただ女神さまか言ってたように相手を選ぶ必要がある、相手には鳥羽さん、犬山さん、他にも今まで戦った人の中には普通の人もいたしね」

「そうっすね、次は大暴れ出来る相手と戦いたいっすね」

「うむ、今度は妾も何かしら役に立ちたいものじゃ」

「相手にもよるね、それにもうそろそろ夏休み終わっちゃうから」

「そうでございます、真心様、夏休みの宿題もやらないとですよ」

「うぐっ……勿論だよ、ガンバリマース」


 最後の言葉はシスタの目を見て言わず明後日の方向を見ながら言い放つのであった


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