卑怯上等
「よいしょっと、初めまして安達さん、数学です」
「初めまして、とりあえず、椅子へどうぞ」
「これはどうも」
数分後、着替えを済ませた真心が学をドラゴンの家へと転移して来た。
真心は既に座っており、学に同じように椅子に座るように促せば素直に座る。
「さてと、それじゃヌメロンをしよう、まずはこれ」
「これって、トランプですか?」
「うん、数字を選ぶのに便利だと思って買っておいたんだ、上から適当に半分ずつ取って、その中から3枚選んで始めよう」
「ありがとうございます」
学はゲームを始める際に、一つの箱をポケットから出し机に置く、それはトランプであった、数字を確認するのに便利だろうという理由から用意したのだ。
「真心様お待ちを、学様、堂々とイカサマは感心しませんよ」
「え、普通のトランプじゃないの?」
「お見事、いやぁ素直そうな子だったから騙せると思ったんだけどねぇ、補佐役は何とも面倒だねぇ」
「なんと、主殿に謀を仕組んだのか貴様!」
「マークドデックでございます、トランプをよく見てください」
「ふむ、主殿失礼……この柄、数字のように見えぬか?」
ドラゴンがまじまじと真心の持つ数字のカードを見つめればそれに気づいたのか目を見開き驚く。それにはカードと同じ数字に似た柄が刻まれていたのだ。
「その通りですドラゴン様、よくよく見れば柄に数字があるのです、手品などでよく使われるトランプですね」
「酷い! イカサマしてまで勝つつもりだったんですか」
「逆に問おう、少しでも勝てる確率を上げるのは悪い事か?」
「それは悪く無いですけど、イカサマや反則は駄目でしょう」
「僕はただ、トランプを使う事を提案しただけだルールを定めた訳でもなし、反則ではない」
「確かに言ってはいません、ですがあまりにモラルに欠けた言動ですね」
自らの卑怯な行為を棚に上げ、真心を見下すように口元を歪める。
真心は最大限の皮肉を漏らしながら思うダンジョンバトル挑む者は皆して、ここまで正確が悪いのかと。
「じゃあルールを作りましょう、まず、お互いに手荷物を持ってはいけない、荷物検査をしましょう、ドラゴンさん学さんの荷物を調べて」
「勿論、そちらの手荷物も検めて構わないよね」
「勿論です、先ほどからお静かな補佐役さん、どうぞお調べ下さい」
真心はそんな学に対して最低限のルールを作る事を提案し、学もそれに従い始める
最初はお互いの手荷物を調べる事に、案の定、トランプ以外にもイカサマに使えそうな物がごろごろと出てくる。一方の真心は補佐役にしたから上までペタペタ触られても何も出てくることは無い。
「ぺたんこ」
「余計な一言言わないで頂けます?」
「何、補佐役が事実を言ったまでだろう」
「モラルばかりかデリカシーも無いんですね、次、確認用の数字はこちらに書きましょう、ノートとマジックペンです、そして書いた紙はお互いの補佐役に見せておく事イカサマグッズを隠してる人の言葉を信じれませんからね」
「それくらいなら、では早速選ばせていただこう、ああ、そうだ、お互いの補佐役は監視の為、プレイヤーの隣に立ってもらうというのはどうかな?」
「あ、書くときは背を向いていてくださいね、私もそうします、いいですね、シスタは数さんの隣に立ってて」
そして、次に真心が用意したのは、ドラゴンの家に勉強の為に持ってきていたノートと筆記用具のマジックペン、それを二枚ほど切り、これに数字を書くよう促す。
「そして、最後にこの場にいる、ダンジョントレーナー以外の発言は禁止、発言によって、数字がリークされた場合、リークされた側の勝利とする、OK」
「構わん、それではゲームを始めよう、まぁ普通にやっても勝たせてもらうよ」
こうしてゲームは始まる、真心の想いは一つ、卑怯上等などという精神性をしたこの男を完膚なきまでに倒す事であった。
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