ドラゴンさんは花を愛でたい

 あの戦いから1日が経ったある日。


「それは大変でしたね真心さん」

「人の弱い所を突くだなんて、酷い人もいたもんだねぇ」

「本当で御座います、真心様、おみかん剥きましたよ」

「ありがと、でもシスタ、ちょっと暑い、くっつきすぎ」

「真心様を思い守る為であればこそです」


 ちゃぶ台で空、菖蒲、真心そしてその真心を膝に乗せるシスタが寛いでいた。

あれからというもの、シスタは真心がダンジョンにいる間、こうしてほぼ密着状態である、これには真心も少々嫌気がさすというもので、困った表情をしていた。


「それでドラゴンだっけどんな能力なの? レベル5だしとっても強い?」

「うん、とても強いよ今見せてあげる」


 そして、今回手にしたレベル5のマモノ、ドラゴンその実力と言えば、凄まじいの一言に尽きる能力を持っていた。


・血液や爪などに猛毒を持つ(効果、幻覚作用、激しい嘔吐、発熱、場合によって死の恐れアリ)

・ドラゴンの時、口から全てを腐敗させる毒の息を吐く

・人の姿に化ける事が出来る

・人間状態ではあらゆる格闘技に精通する

・人間状態ではあらゆる症状を自在に引き起こす毒魔法を使える


「ど、毒ですか、とても危険なマモノに見えますね」

「あの悪辣で悪趣味な男の考えそうな手段と言えますね」

「で、今は何をしてるの? そのドラゴンさんは」

「見に行く? シスタ、ドラゴンさんの所まで飛ばして」

「かしこまりました」


 菖蒲はその能力を見て顔を蒼くしてしまう、シスタは龍二を酷くこき下ろしながらドラゴンの力を評価するのだった、空はそんなドラゴンが今は何をしているのか気になり真心に尋ねると真心は折角だし、見に行こうと全員を連れて真心の元へと飛ぶ。

さて、飛んだ先は。


「おお! 主殿! 今日も麗しく可憐なお姿、愛いのう、それによい抱き心地じゃ」

「ど、ドラゴンさん、苦しいってば」


 コテージほどの家がありその前には様々な色の花が咲き誇る花壇があった。

そんな花園の中に一人の女性はいた、紫のドレスに同じ髪色の緑の瞳をした美女。

そんな美女は飛んできた4人の中、真心を見つけるとすぐさま飛び出し抱き着き頭を撫で、愛で始めるのであった、その表情は龍二を羽交い絞めしながら、恫喝していた姿からは想像できない程に緩み切っていた。


「ドラゴン様、真心様は私の真心様です、お返し下さい」

「何を言うか、主殿は誰の物でもなかろう」

「ドラゴンさん、離して、お胸で息が出来ない」

「おおすまぬ妾としたことが、後ろの者は主殿のご友人じゃな?」

「は、はい……思った程、毒って感じしないですね」

「菖蒲先輩、本人を前にはっきり言うのは」

「構わぬ我は毒を操りあの屑に手を貸していたのだからな、思い出し悔やむ日々よ」

「ここはちなみにフェアリー達の土地の一部ドラゴンさんは今後はエルザ達の護衛をして貰う約束でここにお家と花壇を用意するように約束したの」

「うむ、今後、この森を脅かす者が来れば妾が打ち倒す約束で貰ったのじゃ」


 ドラゴンが居を構えたのはエルザ達が果樹を育てるエリア1と定めている場所の一画であったゴブリン達が家を作りこうしてマジックシードで花を植え暮らしている。

たまにエルザ達フェアリーがドラゴンの下に遊びに来る、今も花壇の周りを楽しそうに飛ぶ姿が見受けられた。


「花は良いのじゃ、まぁ妾みたいな屈強な女には似合わんかもじゃが」

「そんなことないよ、ドラゴンさんだって女の子でしょ」

「嬉しい言葉を、やはり主殿は愛いのう是非今宵は妾と夜を……」

「真心様、そろそろ次のダンジョンバトルの計画を」

「後1勝でダンジョンランキング圏外から上がるんだよね、お盆もあるし、それまでには10勝したいね!」


 ドラゴンが真心を誘うのをシスタが遮ってしまう、ドラゴンはしょんぼりしながら、真心の意気込む姿にこれ以上は言えないと真心を見送るのであった。

 こうして少々偏愛的ではあるが真心に忠実なマモノがまた一体加わるのであった。

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