意外な相手、犬、猿、雉

 ダンジョンの地下のバスケコートにその人はいた。

車いすに座るバスケユニフォーム姿の黒髪の男、その後ろには耳と首に機械的な機構があるミニスカメイドと少し異質な二人組、そんな二人の下に一人の男が何も無かった空間に扉を作りながら入ってくる赤髪をしたバックパッカー姿をした男だ。


「よーっす、今日戦う相手って誰なんよ、犬っち」

「ああ、雉君よっす、今日は安達真心って言う女の子だよ」

「ほーん、で、マモノはどんなの持ってるの、つかまたバスケで戦うの?」

「そうだね、レベル5がいるけど幸いバスケが出来るマモノには思えない、バスケのルールの中なら僕等ならきっと勝てるよ」

 

 赤髪の青年は雉と呼ばれながら、今回のダンジョンバトルのメンバーとして呼ばれた一人のようだ、犬山は自分含む仲間が入れば何とかなるだろうと思っていれば最後の一人が、雉とおなじように扉を作りながらその男も入ってくる。


「お、猿っち、来た来た、よっすよっす」

「よっす、雉、おう犬、今日のバトルは誰とやるつもりだ?」

「やぁ、猿君、安達真心っていう女の子だよ」

「……なぁ、そいつはもしかして」

「たんのもぉー! 先生! バスケがしたいです!」


 最後に入ってきた男が真心の名前を聞くと一瞬反応し、その人間の特徴を述べようとした時、ダンジョンの外から真心が勢いよく入ってくる。

後ろに空、菖蒲、虎徹、でゅら娘、シスタの5名が入ってきた。


「やはりと言うべきか、お前らだったか、安達、安条、安住……」

「お、猿っち、知り合い? もしかして教え子とか?」

「そうだよ、まさか、お前らもダンジョントレーナーだったとはな」

「なんで猿渡先生がそちら側に?」

「もしかして、先生は私達の敵なの?」

「だとしたら、たたかいにくいですね」



 そう、最後の猿と呼ばれている男は三人の美術部の顧問、猿渡なのであった。


「よく来たね、まずは自己紹介、僕達のメンバーから紹介しようか、まずはこの赤髪のは雉君こと雉谷君、あちこちふらふら渡り歩いてる、自称絵描きさ」

「自称じゃないんだけどなー、結構外国じゃ俺の絵売れてるよ、今日はよろぴこ」

「で、こっちの男の人は猿君もとい猿渡君、二人は知ってるみたいだけどね」

「おう、今回は敵同士だな、ひとつよろしく」

「そして、僕の後ろにいるのは僕の補佐役ドローレス、適当に書いたんだけど、後に来た雉君が大層綺麗に書きなおしてね、なんか流行りらしいねアンドロイド系女子」

「そうよ、無口クール系のメカ女子とかよいでしょ?」

「うん、とてもいいと思います」


 犬山の後ろのミニスカメイドが最敬礼を真心達にした時の雉谷の言葉に真心は大きく頷きながら同意する、その姿に次はこちらもと菖蒲が真心をせっつき、自己紹介を真心側も済ませていく。


「さてと、それじゃ始めようかバスケット」

「あのー、すみません、そちらのチームですが、猿渡先生、雉谷さんだけで3名も他人が足りませんが」

「おっと、ドッペル、出て来てくれ」

「クケケケ、俺様をおよびか、マスター?」」

「適当に変身して、バスケをしてくれ」

「了解だぜ、マスター、クケケケ、これでどうかしら?」

「相手が女子だから君なりの配慮か? ドッペル」

「クケケケ、今日は女子の気分ってだけよ」

「もう一人はそろそろ……」

「ども、お待たせしました、鬼です」

「よく来たね、これで二人だ、後は」


 忘れてたと言う顔をしながら、自分の影を数回足で叩くと突如犬山の影が伸び、黒い人型が現れる、彼はドッペルゲンガー、妖精型のマモノであり犬山の記憶の中にいる人間にならどんな存在にでも化けれるマモノだ。

犬山はそんなドッペルゲンガーにバスケが出来るように変化させていく。

どうやら気分次第で男でも女にでも化けれるようだ。

 もう一人も真心達が入ってきたところとは別の通路から入ってくる。

2m以上はある赤い肌をしており、額からは二本の角が生えた男。

所謂鬼でありそれ以上でもそれ以下でもない、何とも分かりやすいマモノであった。


「後一人だけど、ドローレス、ソウルパペットを持ってきてくれ」


 最後に犬山はドローレスへと指示を出しバスケのユニフォームを着た大人の男ほどの大きさの人形を抱えて持ってくる。それに犬山が触れると、車いすに座る犬山が眠るように首をもたげ代わりにソウルパペットが息を吹き返すように立ち上がる。このソウルパペットもマモノの一体、このマモノは所謂魂を持たないが代わりに人間や他のマモノが魂を移すことで、動かすことが出来るというマモノ。


「……これでよしっと、それじゃ始めようか」


 そう、このマモノさえいればダンジョンバトル限定ではあるが、車いすという過酷な運命を強いられた犬山が再びその足でバスケをする事が出来るのであった。

 

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