鳥羽千里の災難

「はぁ、戻りました、彼は?」

「まだいますよ」

「ですよね、はぁ」


 一人のスーツ姿の男がため息をつきながら、顔が犬の男に一つ質問すれば返ってくるのはいつもの言葉だった、彼の名前は鳥羽千里。御年25歳、元気に毎日働く善良な一市民なのだが、彼の人生はとばっちりを受ける人生であった。


 友人同士の喧嘩の仲裁に入れば骨を折り。

球技をしているグラウンドの横を歩いていればボールを喰らい。

とかくまぁ、巻き込まれ、割を食う、そういう人間であった

だが、そんな彼は殊更に怒りをあらわにしない温厚な性格ゆえ、信頼され信用され今日までとても善き人間関係に恵まれ過ごしていた……のだが。


「千里君、今、神様が他の神様に助けを求めたのでもう少しの辛抱です」

「分かってるよ、ワンさん、ただ、泥棒がダンジョンにいると言うのはね」


 つい先日ダンジョンへと入っていく姿を土井泥助という泥棒に見つかり。

いきなり押し入られ脅されダンジョンの力を与えてしまった。

そしてその力で色々と泥棒をしているようだ、警察に駆け込もうとすれば脅される。

そもそもがこのダンジョンの事を警察に言っても世迷言とされるだけだろう。

今、彼の頼みの綱はワン、自分の補佐役の言う、他の神様の助けである。


「千里君、連絡が来ましたよ、ブックを」

「誰からかな? こんにちは千里です」


 ワンが言うようにブックを開けば液晶が空中に出てきて一人の少女を映し出す。

黒髪で小柄の少女、その隣では警察手帳をこちらに見せる男性がつまるところ真心と真路が写っていたのだった。


「も、もしかして貴方達!」

「お静かに、今からスケッチブックに要件を書かせていただきます、それに貴方はイエスとお答えください」

「は、はい」


 千里は警察手帳を見て、神様の知り合いが呼んだ助けが来たと喜び大声を出してしまうが、泥棒にバレてはいけないと声を潜める、そして次の指示を静かに待っていれば真心がスケッチブックを見せる、内容はダンジョンバトルの申し込みである。

 その内容はドロケイであった、泥棒と警察の役割を与えられ制限時間の間に逃げ切るか捕まえれるかを競う鬼ごっこに似たゲームだ。

これを真心は4名選出し自分のダンジョンで制限時間30分で行う事と禁止行為として武器、防具の装着、暴力行為わ定めた。そして行う時間、それは……


「受けます、選出は私、土井泥助、焔狐、雷猿に」

「こちらも、選びました、早速始めましょう」


 了承された瞬間ワンと千里は真心のダンジョンへ飛ぶ。こうして土井泥助捕獲作戦が始まるのであった。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る