安達真路の驚愕

 安達真路あだちしんじ、それが安達真心の父親の名前である、彼は最近、娘が何か怪しいと思っていた。いつもは一人じゃ起きれないのに早起きして来たり。最近お小遣いで何に使うのだろうと言う物を買って来たりしていた。

 それくらいなら、まだ高校生としての自覚が芽生えただとか、そもが変わった物は前々から色々買っていたとその時はそれくらいにしか思わなかった。


 ただ、それだけでなかった。とある非番の日に掃除をしていた時、偶然真心の部屋の扉が開いており不意に覗いてみたら異様に荷物が少なくなっていたのだ。こちらに引っ越すときに幾らか荷物を減らしなさいとは言ったが、これほどに少なかった気はしないと前の早起きと買い物の件もあって、怪しいのが更に増した。


 次に怪しいと思ったのは嬉しい事なのだが、学校のテストの結果が極めて良い結果だったのだ、自分の娘ながら成績はよくて下の中と言ったものと記憶していたが。

塾や家庭教師を雇った覚えもないのに、成績が上がっていたのだそれも劇的と言わんばかりにだ。誰に教わったか聞けば学校の先輩だと言ってたが、長年の勘から嘘だと思った。ここで怪しさは最高潮に達していた。


 今日の夕飯の時にそれらしく何か聞き出してみようと思っていた矢先にまるで引き出しの中にいたかのように出てくる姿に驚愕するのであった。


「真心さん……」

「え、えっとぉ、そのぉ」

「話はお夕飯の後に聞くから、下に降りようか」

「は、はい」


 真路はひとまず、驚きを隠し、夕飯が冷める前に食べる為に真心と下に降りる。

夕飯の席は随分と重苦しかった、いつもなら二人顔を合わせたときは会話が途切れる事の無い和やかな食事だが、今日はどちらも喋らないのだ。やがて食べ終わり、真路は食器を流しに全て持っていき、皿洗いを始めながら、口を開く。


「さっきのあれはどういう事かな?」

「えっと、何の事でしょうか」

「引き出しの中に入ったような、もしくは出てきたように見えたけど」

「うん、それなんだけどね、お話するより物を見て頂ければなと」

「そっか、お皿洗い終わったらね、先にこれだけ聞くけど危険のほどは?」

「無いよ、それだけは絶対に保証する」


 ここで、少しでも危険があるようなら真路は真心に今後、ダンジョンに入るような真似をしないように強く叱り始めるだろう、しかし真心は既に女神からダンジョンで起きる事は人体に影響しないことを女神からも保証されてるので、それだけは無いと答えれる。やがて、真路は皿洗いを終わらせ、再び真心の座る反対の席に座る。


「さてと、モノってのは何なんだい? 真心さん」

「うん、それじゃ、見ててね、開け―ゴマ」

「!? ……う、うちの扉が、これは? 一体?」

「この先は異世界、私が作るダンジョンに繋がってるの入って」

「異世界? ダンジョン? ……わかった」


 真心が席を立ち、廊下へと出る為の扉をダンジョンに続く扉へと変えて開く。

自分の家の扉が謎の空間へと続く扉になった事に驚愕し。真心が扉を作った後に続けた言葉にも疑問符をつけ繰り返す事しか出来なかった。しかし、真路は真心の真剣な眼差しを見て、少しの逡巡の後、その扉の先へと足を勧めるのであった。

 







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