菖蒲のダンジョン計画 ②

「ふぅ、十分十分、主様、準備は整ったのニャ」

「そう、あ、私の事は真心でいいよ、ケットシー」

「それじゃ、次は当初の予定の場所にいくんですよね?」

「そうですね、シスタ、飛んでもらえる?」

「お任せください」

「吾輩もお願い致したく、飛んだ事も無い場所には瞬間移動は出来ないニャ」

「勿論ですとも」


 ケットシーの杖に伸びる青い光が全て消えると、ケットシーは真心に準備が整った事を述べながら杖を突く。そうなれば後は始めるだけだとシスタにいつものように目的地へと飛ばしてもらう、ケットシーもさすがに飛んだ事の無い場所への瞬間移動は出来ない為、ここばかりは手伝って貰う事に。


「つきましたよっと、うーん、一面見渡す限りの平原だ」

「これは耕しがいがあるニャ、やるのは吾輩じゃないけどニャ」

「ケットシーさんのもう一つの力よね?」

「そうだニャ、召喚だニャ!」


 ケットシーが杖を目の前に向ければそこには真心も土木作業に使うゴーレムが召喚される、それも1体や2体じゃない、10、100、1000とにかく沢山だ。

 その数が乱れず整列する姿は壮観である、ちなみにこのゴーレムも少し改良されている。


・命令に忠実

・土木作業が得意

・農作業が得意

・作業に適した腕に変わる

 レベルや知性段階は相変わらずの0だが少しだけ使い勝手が良くなったのだ。


「後はこのゴーレム達が耕し終わるまではお昼寝だニャ」

「終わるのいつくらいになる?」

「分からないのニャ、広さによるニャ、真心様はどのくらいをお望みで?」

「4000」

「ヘクタールかにゃ? それなら寝ずにやるだろうし明日明後日にでも耕し終わって、種があればそれを蒔いて魔法を駆使すれば1週間もすれば」

「4000㎢だよ、どれくらいで終わる?」

「……ちょっと待つニャ、それは無理があるニャ」


 想像していなかったスケールの数字が出てケットシーはその場でシルクハットと杖を置いて寝ようとしたのを跳び起きて真心に驚きの顔を見せる。


 この数値スイスやイスラエルの耕地面積と同じくらいである。

つまり彼の一挙手一投足で一国レベルの耕地面積がダメになるかが決まるのだ。


「いや、そんなの何か月かかるか分かったもんじゃないニャ」

「だよね、とりあえず目標は300人が食べるのに困らない魔力を持つだけの食料」

「それくらいならさっきも言ったけど1週間くらいで行けるニャ、種があれば」

「それもちゃんと用意出来るよ、はい、種」


 まぁ、さすがに真心もそこまで鬼じゃない、今すぐとは思っていない。

それに全て畑にするとも思っていない、ケットシーの暮らす場所や食料を貯蔵する為の蔵や倉庫が必要だろう、ケットシーは真心の言うレベルなら1週間もあれば出来ると言うので、真心は次は樽を一つ用意し、その中に種を入れていく。

マジックシードという、これもまたマモノだ。


・魔力を持つ野菜や穀物が生える。

・生える野菜や穀物は蒔いた者の意思によって変わる。


 実にシンプルなマモノである。その後はケットシーはゴーレムを監視しながら昼寝をするといって草原に寝っ転がってしまう。

 真心はそろそろ戻ろうかと思ったが、菖蒲はケットシーを眺めていたいのかしばらく残ると言う。肌に気を付けるように言うのと、木製の椅子を用意して真心はシスタと共にダンジョンの自分の部屋へと戻る事にするのだった。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る