美術部の活動

 授業はつつがなく終わる、真心と空は学校に来てから既に楽しみにしていたのだ。

美術部で菖蒲先輩に会いに行く事が。ホームルームの終わりの号令を聞くと同時に立ち上がり、第二会議室へと向かう、少し待っていれば菖蒲がその姿を見せる。

ダンボールを1つほど抱えながらだ。


「二人ともはやいですね、よいしょ、今カギ開けますね」

「えっと、菖蒲先輩この荷物は?」

「美術室から引退した三年生が残した画材道具を休み時間の間に持ってきて保健室に置いといたんですよ」

「あ、そうなんですね、大丈夫なんです?」

「あら、こう見えて鍛えてるんですよ私」


 この菖蒲という少女は大きな体躯に合わせ筋肉もそれなりである。

アルビノ=虚弱という概念を覆すくらいにはパワフルな少女であった。

カギを開け終えるとダンボールを再び抱えて入っていき部屋の真ん中に置いた。


「スケッチブックと色鉛筆、絵筆なんかもある、絵の具は結構減ってるわね」


 菖蒲はダンボールから次々に画材道具を出していく、中には紙粘土なんかまで出てくる、何か作りたいものが無いかを二人に聞けば、空はまず何を作ればいいのかさっぱり、真心も別に何でもいいかなと、述べる。


「そうねぇ、何かモデルになるものを描くのが最初はいいわよね」

「それじゃ、お互いの似顔絵でも描いてみる? 私が空ちゃん、空ちゃんが私で」

「うん、それでいいよ下手でも笑わないでよ」

「それじゃスケッチブックと色鉛筆、丁度二つずつあるからプレゼントするね、それと今すぐじゃないし正式に入らないなら必要ないけど入るなら入部届けを近いうちにお願いね」

「あ、はーい」

「あ、ごめんなさい」

「いいのいいの、それじゃ自分のイーゼルとキャンパス取ってくるから描いててね」


 菖蒲は二人にスケッチブックと色鉛筆を渡してあげると、まだ自分の荷物。

昨日の書きかけの猫のキャンパスとイーゼルを取りに行くべく外へ出る。

真心と空は二人でパイプ椅子に座り早速似顔絵を描き始める。


「菖蒲先輩、とってもいい人だね」

「うん、それにとても優しい感じ」

「わかるわかる、こう受け止めてくれそうなお姉さんな感じするよね」

「実際に私達より一つ上だしね」

「ああいうお姉ちゃん欲しかったなー」

「あら、嬉しいわ、ありがとね」

「よかったな安条」


 二人が似顔絵を描きながら菖蒲の話で盛り上がっていると菖蒲が戻ると一緒に一人の男が入ってくる、男は2年生の担任が為に真心と空は初めて会う先生であった。

どうやら美術部の顧問でもあり定期的に安条の様子を見に来たりしてるそうだ。


「二人が入ってくれれば俺としては嬉しいよ、美術部が存続するからな」

「え、そんなに危ない状況だったんですか?」

「1学期までに部員が一人も増えなかったらって期限付きだったんだよ」

「後2か月くらいしかなかったんですが、菖蒲先輩?」

「そ、そのポスターは貼ってたのよ」

「それだけで来たら誰も苦労しないな、入部届あるなら、ここで受け取るが?」

「あ、私持ってますよ」

「私も」

「それじゃ、後は部長と顧問の俺のサインだけだな、ほれ部長さん」

「はい……出来ました、後はお願いします、先生」

「おっしゃ、これで教頭にもうですがもしかしも言えない様に出来る、それじゃ早速手続きをしてくるから3人は美術部の活動楽しんでな」


 顧問の先生は笑顔でスキップしながらそれだけ言うと会議室を去っていく。

更に鼻歌までするのだから、よっぽど教頭に苦心していたのだろうと分かる。

まぁ、そんな先生が去ってからその後三人でお喋りをしながら時間になるまで一緒に絵を描くのであった。


結果、菖蒲の黒ヒョウの絵は少しだけ進み。

真心のスケッチブックには上手に書かれた空の顔が残り。

空のスケッチブックには個性的に歪んだ真心の顔が残ったのだった。

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