長い名前 -植物編-
長い名前の植物というと、生物好きの間で有名なものがある。
リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ。
カタカナにして21文字、漢字にすると竜宮の乙姫の元結の切り外し、となる。
これは珍しいものではなく、川の河口部や海の浅い場所に行くとたまに水の中に生えているのが見られる。細長い海草で、乙姫様の髪というよりはどちらかと言うとニラに似ている。
海藻が繁茂している場所を
『アマモ』という言葉が唐突に出てきて戸惑うかもしれない。この文章でも、名前が長いので『これ』とか『この植物』とかで誤魔化してきたが、リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシは別名であり、標準和名はアマモという。
わずか3文字に短縮された。
このアマモ場、魚類や甲殻類をはじめとする多くの生き物の産卵場所、稚魚や幼生の隠れ家となっており、『海のゆりかご』と呼ばれることもある。また、アマモ自体が一部の生き物の餌となり、さらには光合成により海中に酸素を供給する役割も果たす。
このように重要なアマモ場であるが、近年では河川改修や海の埋め立て、土砂の流入、そして東日本では津波の影響により、数が減っている。
このため、アマモ場の調査とか保全活動は各地で行われている。
筆者が以前いた会社でも、海洋調査の部門でアマモの移植作業を請け負ったことがあった。筆者は陸上昆虫類が専門のため、詳しいことはわからないが。
これでもし、標準和名がアマモじゃない方だったら、一体どうなっていたことだろう。
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『●●川河口部におけるリュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシの生育状況調査と、リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ場再生のためのリュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ移植に関する報告書』
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リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシは、リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ
リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシを中心とした海草類が群生する場所はリュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ
本報告書では、●●川河口部周辺におけるリュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシの生育地の現況を調査するとともに、近年の河川改修の影響に伴い衰退したと考えられるリュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ場の再生のため、リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシの移植の方法とその可能性について考察を行った。
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もはや落語の『
寿限無寿限無(中略)の長介さんほどではないがリュウグウノ(中略)キリハズシも十分長い。
報告書作っている間に生息地がやられてしまいそうだから、もっと短い名前に変えろと怒られてしまうかもしれない。
ちなみに現実のアマモは、オモダカ目アマモ科アマモ属に分類される。
◆
それでは、別名ではなく標準和名で最も長い名前の種はどのようなものだろうか。
仕事用のデータベースで調べてみたら、以下の4種が該当した。
アツギノヌカイタチシダマガイ
リュウキュウヒメアブラススキ
ムラサキアズマハンショウヅル
シロバナナガバノイシモチソウ
やっぱり琉球が名前に入る南西諸島産の種は名前が長くなるが、それがなくても長い名前の種はある。
それでも最大14文字と、急に文字数が減る印象がある。
◆
では逆に、最も短い名前の植物は何だろうか。
昔は、
続いて2文字だが、これはケラ1種だけの昆虫と違ってたくさんある。
ウメ、モモ、イネ、クワ、スギ、ヒシ
なお、紛らわしいものを挙げておくと、柿はカキノキ、茶はチャノキが標準和名である。なぜそのような違いが生じたのかは、専門外なので知らない。
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