巳 ―ヘビ―
十二支シリーズ、第六弾はヘビである。
十二種の動物のうち、
鳥類というのがまたややこしかったりするのだが、それは
◆
哺乳類の中では、ウサギの痕跡が良く見つかると先日書いた。
一方、両生類・爬虫類を含めた小動物の中では、昆虫類調査をしていて最も多く確認されるのはアマガエル(ニホンアマガエル)だろう。
同じ現場で両生類・爬虫類・哺乳類調査――略して両爬哺調査――も実施していた場合、昆虫類調査時に見つけたものも記録して報告する。
ただ、哺乳類の糞や足跡は慣れていないのであまり見つけられないのもあるが――というか多分あっても目に入らないだけなのではないかと思うが――専門外のものが記録しても作業の手間が増えるだけなので通常は記録しない。生きているものを見つけた時だけ、可能なら写真を撮り、位置をGPSで記録しておく。
なお、上記は仕事の方法としてルールのようなものがあるわけではなく、ほぼ暗黙の了解である。本当は昆虫調査員は昆虫以外を調べる必要はなく、専門外のものを記録する規定もない。
だから、専門外のものを記録するのは単なるサービスであるが、ごくまれに専門の調査員が見ていないものを発見して記録種数が増えることもある。
もちろん専門家のミスでも怠慢でもなく、多くの目で見た方がサンプルは増えるというだけの話だ。
まあ、アマガエルみたいな普通種は一々記録しないが。
その他両生類については別項で書くとして、ヘビを含む爬虫類の話をしよう。
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爬虫類は大きく四つのグループに分けられる。
ワニの仲間、カメの仲間、ムカシトカゲの仲間、そしてヘビとトカゲの仲間である。
このうち、ワニとムカシトカゲは日本にいない。
ひょっとしたら、少し前にある環境調査でワニが目撃されたという話を聞いたことのある方もおられるかもしれないが、どうもそれは見間違いに尾ひれがついて広まってしまったものらしい。
トカゲとカメについても、書き出すとまた長くなりそうなので、機会があればまた。
で、ようやくヘビの話である。
◆
日本には五十種類近くのヘビが生息するが、ほとんどが南西諸島に分布しており、本州でみられるのは八種のみ。
一番知名度の高いのはおそらく、毒蛇として知られるマムシだろうか。田舎に行くと、よく山林にマムシに注意の看板が立っていたりする。
もう一種、毒蛇としてヤマカガシが本州に分布する。ただしこの蛇、五十年ほど前までは無毒だと思われていた。実際には奥歯に毒があり、深く長く噛まれないと毒を受けないらしい。
あと、この仕事を始めた当初、このヘビの名前をヤマガカシだと思っていた。正しくは
カガシ、という言葉が聞き慣れないのが原因と思われるが、ヘビを意味する古語らしい。
それから、比較的知名度の高いものではアオダイショウが挙げられる。この種は主に人家などの周辺でみられるもののようで、逆に山林を対象とする環境調査ではなかなかみられないようである。
それから知名度も低く、個体数も上記のものに比べれば少ないものとして、ジムグリとヒバカリの二種が挙げられる。
上記の五種は、普通に昆虫調査をしているとそれぞれ年に一、二個体見つかるか見つからないかぐらいの頻度で確認される。
こちらが捕虫網をバサバサと振りながら歩いて行くとたいていの生物は向こうから逃げていく。だから昆虫調査は、あまり他の生物を並行して確認するのは向いていないかもしれない。
しかし、それでも調査中にかなり頻繁に見つかるヘビがいる。それが本州における最普通種のヘビ、シマヘビである。
と言っても逃げなかったり、こちらに向かってきたりするわけではない。普通に逃げていくのだが、確認頻度はかなり高い。
警戒心が弱いとか動きが鈍いとかいうわけではなく、純粋に個体数が多いのだろうと思う。
あと、個体数は多いのに知名度は低い。マムシやアオダイショウは知っていてもシマヘビは知らないとい人も多いのではないだろうか。昔は自分もそうだった。
のこり二種は、シロマダラとタカチホヘビである。個体数が少ない上に夜行性のため確認例は非常に少ない。
筆者は、シロマダラは昔、車に轢かれた死体を一度見た記憶があるだけで、タカチホヘビは見たことがない。
シロマダラの方は、時おり地方新聞に発見の記事が載っているくらい珍しいものであるようだ。
◆
さてこの十二支シリーズの目的である年賀状のネタについてであるが……。
仕事で撮影した写真は発注元に権利があるので、撮影者とはいえ勝手に利用することはできないけれども、個人的に撮影したシマヘビの写真はいくつかある。
しかし、絵ならともかく、ヘビの写真など見せられても一般の人はあまり良い気はしないのではないだろうか。
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