第85話 悪い事は現実になる 2

もう9月中旬になるのに、残暑は厳しく、猛暑日が続いていた。

毎日、仕事終わりには、軽い脱水症状になっていて、体力の消耗が激しかった。


今日も仕事が終わり、現場の後片付けをしている時だった。


「危ない!!!」


そんな声で振り返った時には、車が目の前にいて、必死によけたつもりだったが、よけきれず、足をひかれていた。

何が起きたのか混乱している中、俺は倒れこみ、うずくまっていた。


「痛えぇぇぇぇぇ!!!!」


最初の方は記憶があったが、痛みと暑さで意識がもうろうとなり、しばらくたって気絶して記憶が全くなかった。



次の日の朝、私は少し心配していた。

直樹がライン朗読になっていなかったから。

仕事で疲れて寝てしまったんだと思っていたけど、光武君が私の教室まで来たときに、嫌なデジャブがよみがえってきた。


「一恵ちゃん、直が仕事中に、車にはねられたって・・・・」


「・・・・・・ま・・・また・・なの・・・」


「命には別状ないって言ってたけど、左足を骨折してるみたいで」


「!!!!なんで・・・・また直樹なの・・・・・・」


危険な仕事だから、少しは覚悟していたけど、直樹ばっかり傷ついてる・・・・・・

とにかく、早く顔が見たくて仕方がなかった。




俺が目覚めた時には、痛々しいギブスをはめた姿だった。

周りは明るく、時計は昼の3時を指していた。

しばらく経ってから、看護師さんが気付き、先生を呼んできた。


「横井さん、左足の痛みはあるよね。幸いと言ったらアレだが、左足の骨折程度で済んだよ。前にも首の手術してるけど、首や左手の方は痛みを感じるかい?」


「痛みはないけど、左手のシビレは酷くなってる感じがします」


「今は、とにかく安静だから、ゆっくり休んで、心を落ち着かせてくれるかな」


「はい・・・・わかりました」


「あと、リハビリの担当の人が、後から訪ねてくるみたいだから。それではお大事にね」


そう言って先生は病室を後にした。

前の事を知ってるって事は、同じ病院で入院してるんだなと確認した。

しばらく経ってから、リハビリ担当の人が病室を訪ねてきた。


コンコン


「リハビリ担当の松本です。失礼します」


ん? もしかして・・・・松本さんと言えば・・・・・・


「やっぱり・・・・横井さんだった・・・・戻って来ちゃダメって言ってたのに!」


「あぁ~。松本さん・・・・・・ご無沙汰してます・・・・」


「ご無沙汰じゃないですよ!!もう!!」


「今回は仕方がないですよ。車が突っ込んできたんですから!」


「そうですよね・・・・首と左手の方は、その後、大丈夫ですか?」


「痛みはないですけど、シビレが強くなっちゃいまして・・・・・」


「そうですか・・・・また私が担当なので、よろしくお願いします!!!」


「こちらこそ、お願いします」


「左足の痛みがもう少し治まるまでは、リハビリも先なので、今は安静にしててくださいね!!」


「はい、わかりました」


そう言って、松本さんは、病室を後にした。

知ってる人だから、安心感もあるけど、また辛いリハビリが待っているかと思うと、心の方は憂鬱になっていた。

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