第71話 頑張りすぎ?

仕事が忙しくなった事と、12月の寒さのせいで、左手のしびれが段々と酷くなってきていた。

1カ月に1度は通院をしていたが、何をする事なく、ただ薬をもらいに行っている様なものだった。

生活上は、さほど問題はないが、細かい作業をするときは、いつもイライラしながの作業で、2割くらいシビレているだけでも、凄いストレスになっていた。


仕事中もよく物を落とすようになって、それに気づいた田口さんが言い寄ってきた。


「先輩、どうしたんですか?最近よく物を落としますよね」


「あ~~~、田口さんには言ってなかったけど、俺、ここに来る前にバイクで事故って入院してたんだ」


「え~~~!それじゃ、その後遺症でってことですか?」


「そうだね、最近ちょっと左手のシビレが酷くなってきてね・・・」


そう言うと、田口さんは俺の左手をさすってくれた。


「先輩、頑張り過ぎですよ~!もっと身体をいたわらないと!!」


「そうも言ってられないだろ。クリスマスも近いんだからさ」


「そうですけど・・・・・・・私、もうちょっとバイト量増やしますから、少しは楽してくださいね!!!」


「そこまでしなくてもいいよ~~」


「先輩は、自分の身体を心配しなさい!!!!」



とてもやさしく、働き者の田口さん。

俺が付き合ってなかったら、まちがいなく惚れてただろうな。



秋祭り以降、一恵ちゃんとは、ラインは頻繁にしてるが、遊びに行ったりのお出かけは出来ないでいた。

学校帰りに、少し会ったりはしているが、もっともっとずっと一緒に居たい!!

クリスマス前の、俺の休日に、平日ではあるが一恵ちゃんとデートの約束をした。


いつものショッピングモールで待ち合わせで、一恵ちゃんは息を切らしながら走ってきた。


「直樹く~~~~~ん。おまたせ~~~~」


「そんなに走って大丈夫?一恵ちゃん」


「早く・・・・・・・ハァハァハァ・・・・・逢いたいから走って来ちゃった♡」


「お互いに忙しいから、仕方がないけどね・・・俺はもっと逢いたいけど・・・」


「私も、もっと、も~~~~っと、逢いたいよ♡♡♡」


そう言って、手を握りながら喫茶店へと向かった。

俺は、左手で握っているから、半分くらいは感覚がなく、少し寂しかった。


「直樹君、左手の方の調子はどう??」


「最近・・・・・ちょっと酷くなってきてね・・・・」


一恵ちゃんは、力強く、俺の左手を握ったが、やっぱりこそまで感じられない・・


「私のおまじない・・・・・効かなかったんだね・・・・・」


「こればっかりは、どうなるか分からない。医者も、残るかもって言ってたしね」


彼女は、ちょっと悲しげ表情をしながら、お店へと入っていった。


「もう一回やってみるね!」


俺の左手を両手で大事そうに持ちながら、一恵ちゃんの柔らかい唇をあててくれた。


「治りますように!!!」


田口さんといい、一恵ちゃんといい、俺は、どれだけ迷惑かけてるんだ!!!と、心の中で叫んでいた。


「一恵ちゃん、ごめんね、クリスマスも一緒に居られなくて・・・・・・」


「大丈夫だよ~!初めからわかってた事だし。

 その分、誕生日にずっと一緒にいようね♡♡♡」


俺の誕生日が1月6日で、一恵ちゃんは13日。


「ちょうど9日が、両親の会社の新年会でお泊りだからいないんだ~。二人の間を取ったら、9日だから、その日に、私の家で誕生日会しない??♡♡♡」


「えっ!本当に!!正月明けだから、仕事も落ち着くだろうし、俺休み取るよ!」


「本当に~~~!!やった~~~~♡♡♡」


そんなに長い時間は居られなかったが、充電はしっかりできた!!!

正月を超えれば、楽しい誕生日会が待ってる。

嵐だろうが何だろうが、かかってこい!!と、やる気十分になっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る