第67話 手作りハンバーグ
土曜日の20時。俺は仕事が終わり、一度家に帰ってシャワーを浴びて、一恵ちゃんの家へと向かっていた。
初めて入る一恵ちゃんの部屋。すごくいい匂いがするんだろうな~と、勝手に妄想をしていた。
どんなに急いでも、家にただり着くまでに30分はかかり、もう21時を過ぎていた。
一恵ちゃんの家のチャイムの前で、緊張のあまり2、3分は固まってただろうか。
ドキドキしながらチャイムを鳴らした。
ピンポーン
「あ!直樹君!ちょっと待っててね~~」
そう言って、走ってきたのか。少し息を切らしながら俺を出迎えてくれた。
将来も、こんな感じで、お出迎えしてくれたら・・・・俺は最高だけどな!!
そんな事を思いつつ、緊張でガチガチの俺は、家の中に入っていった。
「ごはん、出来てるから、早く食べようね~~♡」
入院してるとき、何度も弁当を作ってくれてるから、料理上手なのはわかっているし、味付けも最高に俺好みなのもわかっている。
それを、出来たてで食べれるなんて・・・・・・もう何も言う事はない!!
ちなみに、メニューは、手作りハンバーグだった。
「直樹君!今日もお仕事ご苦労様!!いっぱい食べてね!!♡」
「うん!めちゃ腹へってるんだ~~」
一恵ちゃんは、噂話の事には、一切ふれずに、違う話題ばかりしゃべっていた。
俺に気を使ってるんだろうな~。そう思った。
ごはんを食べ終わった時には、もう、22時を超えていたが、俺の明日の仕事も10時と遅めなので、十分、夜遊びができる。
緊張もほぐれてきて、いつもの二人の感じに、戻ってきたみたいだった。
「食器洗い終わったら、二階の私の部屋にいこうね~♡」
そう言って、エプロンを付けて食器を洗い始めた。
「あ~~!俺のピンクのエプロン持ってくればよかった~~!」
「いや~~。あれは直樹くんしか似合わないって~~(笑)」
「何言ってんだよ~。一恵ちゃんの方が可愛いに決まってるし~~~(笑)」
女の子のエプロン姿って、やっぱりいい!!
結婚したら、毎日こんな感じなんだな~と、また勝手な俺の妄想が始まっていた。
洗い物が終わり、サッ とエプロンを外し、セミロングの髪をなびかせた時、シャンプーのいい香りが、俺の鼻に突き刺さった。
「それじゃ~私の部屋にいこっか~~」
そう言って、階段を上り、恐る恐る部屋に入っていった。
「お・・・おじゃまします~・・・・・・」
俺の部屋とは違い、みごとなくらい片付いていて、清潔感のある白がメインで、ピンクのカーテンと、まさしく女の子の部屋って感じがした。
俺が周りを見渡していると、
「恥ずかしいからあまり見ないでね」と照れた、一恵ちゃんの顔が可愛かった。
壁には、あの場所の風景画が5枚飾ってあったが、1枚はなんと、俺の描いた風景画だった。
「一恵ちゃん、これって俺が描いたやつじゃん・・こんなの飾らなくても・・・」
「なんで?すっごく私の好きな絵だから、飾るのは当然でしょ!!」
「そうなんだ~。俺はすごくうれしいけどね!!」
残り4枚は、一恵ちゃんが描いた、春夏秋冬の、あの場所なんだが、よく見たら、下の方に、座った女の子が描かれている。
これは、もしかして一恵ちゃん本人じゃ?と思い聞いてみた。
「ちょっと聞いていいかな?この座ってる女の子って、一恵ちゃんなんじゃない?」
「うん!これ私だよ!直樹君が来たから、やっとこの4枚を完成させられる!!」
「どう言う事?」
「これで、やっと直樹君を描けれるから、今からモデルになってね!!」
「えっ!!ヌードはムリだって~~(笑)」
「誰がヌードを描くのよ(笑)」
そう言いながらも、体育座りをさせられた俺を、一恵ちゃんは描き始めた。
「動いちゃダメだからね!あと、まばたきと息も禁止ね!!(笑)」
「それは・・・・・・死んでしまうじゃんか~~(笑)」
二人笑いながら、10分くらいだろうか。
一応は動かずに、なんとかモデルは終了となった。
「出来た~~!!あとは色を塗って完成だ~~~~♡♡♡」
「モデルってかなり大変なんだね・・・・・・・何だか肩が痛いよ・・・・・」
「はい♡♡♡ご褒美あげるね♡♡♡」
そう言って、一恵ちゃんが膝枕をしてくれた・・・・・・・・・・なんとも温かく柔らかいこの感触は、疲れを吹き飛ばしてくれた。
「お仕事で疲れてるのに、モデルまでやってもらってごめんね・・・・」
「全然大丈夫だよ」
「この絵の完成を、私ずっと待ってたから、本当によかった♡♡♡」
俺の髪の毛を触りながら、しばらく膝枕の中で話していた。
気が付けば、もう0時を回っていた。
「そろそろ寝ないと、明日も仕事だからね、直樹君は」
「そうだね、そろそろ帰ろうかな。嫌だけど・・・・・」
「それじゃ~泊っていけば?・・・・・・」
「そ・・・・・・・それは・・・・・まずいでしょ~」
「大丈夫だよ♡♡♡私はそばに居てほしいの!!直樹君に!!!」
まさか、お泊りになるなんて思ってもみなかった。
ドキドキで寝付けるのかどうか・・・・・・それが、うれしい心配だった。
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