第60話 遠回りの結果
次の日は平日で、俺は仕事が休みだった。
なんだか、今日という日は長くなりそうな予感がしていた。
かなり遠回りしたけど、やっと告白できる。
一度は告白しようとしたが、タイミングが合わず・・・・・
加藤さんから告白されたときは、靖枝さんと付き合っていた・・・・・・・
このまま友達以上を続けていたら、『別れ』は、無いのかもしれない。
だけど、それ以上も進めないのは、俺としては、すごく嫌だった。
いつも、加藤さんが、あの場所で絵を描いているのは、16時くらいだろうか。
昼食を食べ終わり、少し早いけど俺は、あの場所で待っていることにした。
土手沿いに座り込み、ボーーーーっと空を眺めていた。
結局、どんなに考えても、加藤さんが避けている事の、理由はわからないまま。
とにかく、二人で遊びに行った事や、病院での心の看病は、嘘じゃないって、信じる方向に持っていかないと、俺の心はつぶれそうだった。
いろいろと考え事をしていたら、いつの間にか眠ってしまっていた・・・・・・・・
どれだけ時が経ったのだろう。誰かの声が、うっすらと聞こえてきた。
「・・・・・・くん。・・・・・・・横井君」
「・・・・・・え?・・・・あっ!・・・・加藤さん!」
上からのぞき込んいる加藤さんの姿が、そこにあった。
「お仕事で疲れてるのかな??ご苦労様~!(ニコッ)」
いつもの加藤さんに戻っている様子に、俺からは見えた。
「・・・・・ごめん・・・・呼び出しておいて・・・・・寝てるなんて・・・・」
「大丈夫だよ~。それで、仕事の方は順調かな??」
「そうだね、だいぶん慣れてはきたかな~」
「可愛い女の子もいるからね~~」
「ん??あぁ~バイトの子の事かな?」
「うん。すごく仲いいんだね~~うらやましい~~」
・・・・・・ん???さすがに、鈍感の俺でも、避けている原因がわかった。
「ち・・・・・ちがうよ!あの子とは何でもないんだから・・・・・・」
「ごめんなさい。私、すごく嫌な女だね・・・・・・そんなのはわかってる。
だけど、すごく悔しかったんだもん!!」
その言葉を聞いて、これなら大丈夫と確信を持てた。
「加藤さん・・・・・俺、加藤さんと付き合いたい!!!
入院してる時に言いたかった・・・・・
だけど、仕事もしてない時だから、言えなかった。
それと、こんな俺だから、加藤さんに迷惑掛かると、ずっと思ってた。
同い年でも、学生と、社会人って所が、ずっと引っかかってた。
高校で、『あいつ不良と付き合ってるみたい』と言われるんじゃないかと、
すごく心配で・・・・・・・・
でも、そんな事、加藤さんの接する態度を見ていたら、
俺の勘違いだってわかった。
だから、俺と付き合ってください!!!」
加藤さんの瞳から、涙がこぼれていた。
「やっと・・・・・・・・・・言ってくれたね・・・・・・・・・・
ずっと待ってた。一度告白して、ダメだったから私・・・・・・臆病になってた。
頑張っている横井君の事を、悪く言うヤツがいたら、私が叩いてあげる!!
ただの、偏見で物事を言う人が多すぎる。
でも、私は・・・・誰が何と言おうとも、味方だからね!!
だから、横井君も、考えすぎないで!!
これから二人で、歩いていこうね・・・・・・・ありがとう・・・・・・・・」
しばらく、加藤さんは、泣き止むことが出来なかった。
そんな加藤さんの頭を、俺は、なでながら抱きしめていた。
少し落ち着いてから、沈む夕日を二人で見ながら、手をつないで座っていた。
「なんだか私、すごく ホッ とした」
「俺もだよ」
「だって、そのバイトの子とすごく、仲良くしてるんだもん・・・・・・・」
「ま・・・・まぁ・・・・・話くらいはしてもいいでしょ?」
「どうしよっかな~~~~(笑)。
私たち、もう付き合ってるから、話ぐらいならいいよ~~」
「加藤さんだって、高校で、他の男子としゃべるでしょ?」
「そうだね・・・・・私って意地悪だね・・・・・・・」
「でもそれだけ、俺の事を、本気で思っててくれてる証拠だね!」
「フフフ。もう、夕日が沈みそうだね」
「また、遅くなるから、そろそろ帰ろっか」
「そうだね・・・・・・・それじゃ~またラインもするね~~直樹くん♡」
急に名前呼びになって俺は、ほほが緩んだ。
「お・・・・おう・・・・・俺もするよ、・・一恵ちゃん(めちゃ恥ずかしい)」
「それじゃ~またね~~~バイバイ~~~♡♡」
出会ってからだと、かなり遠回りだったけど、無事二人は付き合うことができた。
これで、みんなと遊びに行っても、なにも遠慮なく加藤さんとイチャつける。
この場所は、二人にとって、すごく思い出深い場所になった。
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