第49話 慣れは危険

いつもの、リハビリの時間に、松本さんではなく、違う担当者の人が訪ねてきた。


「コンコン・・・・・・・失礼します」


「どうぞ」


「今日は、松本が休みで、私が担当になりますので、よろしくお願いします」


「あ。はい・・・・・よろしくお願いします」


「では、移動しますね」


「あ・・・あの。今日だけですよね?」


「そうですね。ちょっと松本が、急用があるとかで」


「そうですか」


俺は少し、ホッとした。

なぜなら、俺の容体が変わらないから、変えさせられたのかと思ったからだ。


代わりの人は、30歳くらいの、ベテランさんっぽい担当の人だった。


「でわ、マッサージしますね」


慣れた手つきで、マッサージするのはいいが、ちょっと力が強すぎる感じがした。

段取り良く、次々とリハビリをこなしてはいたが、なんだか、作業的な感じで、

あっという間に、1時間が過ぎ、リハビリ終了となった。


次のリハビリの日は、松本さんが、訪ねてきてくれた。


「昨日はすいませんでした。急用ができちゃって・・・・・・・・・」


「大丈夫ですよ」


「それでは、最初はマッサージからやっていきますね~」


同じマッサージでも、力の入れ具合が全然違い、松本さんの方は、思いやりがあるって言うか、とにかく優しく、慎重な感じがした。

慣れって、ちょっと雑になっていくんだなと、感じさせられた。


「横井さんに聞いていいですか?」


「はい、どうぞ」


「彼女さんとかは居るんですか?」


「あ~・・・・・別れたばかりですね・・・・・」


「あっ!・・・・・ごめんなさい・・・・・・嫌な事を聞いちゃって・・・・・」


「いえ。全然大丈夫ですよ。松本さんは、当然居るんでしょうね」


「あ、はい。いますよ~(ニコッ)」


「うらやましいです。仕事も恋愛も順調で!」


「何言ってるんですか~!横井さん格好いいし、何て言ったって若いじゃないですか!これからですよ~これから!!」


「そうですかね~・・・・・諦め半分ですけどね(笑)」


「私の方はまだ、社会人になったばかりだから、失敗も多いですよ。よく言われるのが、先輩から、握力が無い!それがマッサージか~!って怒られますよ(笑)」


「俺はそんな事ないと思います!昨日の人はちょっと、力入れ過ぎで痛かったですし。松本さんの優しいマッサージのほうが好きですよ!」


「ほ・・・・本当ですか!!ありがとうございます!!」


「人によって個人差はあると思いますが、淡々と進めていく、リハビリも辛いもんですよ」


「ただでさえ辛いリハビリだからこそ、少しでも楽に、楽しくと考えてます!」


松本さんは、気配りのできる、本当にいい人だ。

世話をしてくれる看護師さんも、優しい人ばかり。


仕事とはいえ、ちょっとした気配りも出来ない人もかなりいる。

例えば、そんなに親しくない人に話しかける時、声のトーンを変えないとか。

棒読みになって、俺は何だか信用できない。これって俺だけ??


前の会社でもそうだった!!

頼みごとをするときも、偉そうにしてる上司ばかりだった。

大人って、そんな生き物なんだろうか・・・・・・・・

仕事を押し付けといて、ちょっとは気を使え!!バカ野郎!!!

こんなストレス社会だから、大人になりたくない!と、不安に思ってしまうんだ。

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