第28話 宝条院椿姫

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 誰もいなくなった放課後の教室に、少女が一人佇んでいた。

 綺麗な金髪が、開いた窓から吹く風に揺れる。その姿は煌めく夕日に映えていた。

 午後からの選択授業で魔術を専攻している宝条院椿姫は、神崎流斗たちとは別の場所ですでに調整を終えている。

 明日は魔術闘技会への出場権をかけて流斗と戦う。もちろんその対策は考えてある。


(神崎流斗の選択科目は『武術』。おそらく彼は、魔術をサポートとして使う武術家でしょう。前回の廊下での戦いで、なんとなくではありますが、その考えが確かであることをわたくしは確信している。なら、多彩な魔術戦には慣れていないはず……)


 そして、明日戦うことになる予備アリーナの地は、砂である。


(であれば、その地を生かさない手はない。相手が自然に干渉する高度な魔術を使えないのなら、武術家には対処しきれないほどの圧倒的な物量で押し潰してしまえばいい)


 流斗と違って生まれつき魔力神経が優れている椿姫にはそれができる。この学園で『一番』を目指す椿姫は、こんなところで足止めを食うわけにはいかなかった。


「お父様……」


 自分の前に立ちはだかるというのなら、それがどんな相手だろうと叩き潰すまでだ。


「お父様は誰よりも優しかった。けど、弱かったから死んだんだ。わたくしは絶対に強くなる。誰よりも強く」


 椿姫は明日の戦いに向け、改めて強い決意を固める。その瞳には熱い闘志が宿っていた。


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