第35話 アニタの心情
「お願い!お金を返して!!」
「無茶言うなよ!それにあれはお前が勝手に寄越したもんだろ!?今さら返せって言われたってねぇよ!!」
男は悪態をつきながら突き放す。
「お金が無いと私奴隷になっちゃうのよ!」
「俺の知ったこっちゃ無い!!」
私は絶望しとぼとぼと帰路につく。
「何でこんなことに…」
思い出すのは数日前の出来事…ちょっとしたイタズラ心で銀狼族の不評を買ってそこから転落が始まった…
「アイツが居なければ…いや…悪いのは私か…」
私は一応貴族の端くれだったので自分より上の存在に楯突く事がどういう事を引き起こすかわかっていた自業自得なのだど。
数日後
「ほら!乗れ!」
私は首輪をつけられ馬車に載せられた。
お父様が買い戻してくれるかもという小さな期待は脆くも崩れ売りに出される事になった。
いやらしい視線が自分を襲う。
「…男なんて…」
銀狼族の男…貢いだ男達…風評の為に自分を捨てた父親…今視線を向けて来る男たち…みんな嫌い…
虚ろな瞳でこれから離れる町を眺める。もう戻って来ないかも知れない町を。
門が近づいて来てもう終わりかと思ったその時目に白銀の髪が飛び込んできた。
なぜか向こうも驚いたような表情でこちらをみている。
あれ?どこかで見たような?
「あのすみません!その娘おいくらでしょうか?」
その方は馬車を止めると私を指差して値段を聞いてきた。
「800万だが嬢ちゃんに払えるのか?」
どうせ払えないんだろう?とめんどくさそうに相手をしている。
「ん~はい!わかりました。買わせて貰います」
「そうだろう…って買うのか!?」
「…?はい?何か問題でも?」
一括で買い上げられその場に下ろされた。
「ではこの指輪を…」
「これは?」
「所有者の証です」
「今は仮登録で私が主となっていますがこれを嵌めて首輪に触りながら<契約>と唱えて下さい」
「<契約>」
「これで登録完了です」
「リリスあんたいきなりアニタ買っちゃって なにやってるのよ!家はどうするの!?」
クレアがあまりの展開の早さに呆然としていたが一段落して意識が帰ってきたらしい。
「そ、そうよ家に700万もかかるのに予算全部使っちゃって!もう契約の話になってたのに!」
「え!?」
そ、そんな大事なお金で私を買ってくれたの?
「大丈夫!家の分のお金もあるから」
「「「え!?」」」
神様…ここ数日間散々恨み言を申しましたが…今この運命に感謝したくなってきました。
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