第16話 部活×ロシア×鈍感
「なぁお前ら、これ誰か知ってるか?」
俺たちは放課後の教室にいた。
授業も終わり、吹奏楽の練習をする音や、野球部が掛け声に合わせて何やら外周を走っていた。
運動を部活でするなんてすごいなぁ……俺はあくまで趣味の範囲内でいいしな。
集まってきたのはいつもの5人。
俺は鞄の中からある一枚の写真を取り出した。昨日、物置で見つけた謎の写真であった。俺は遊んだことのある人物をすべて覚えていた。それも、今ここにいる人物だけだ。智里、イリーナ、有栖、柊、花梨。この5人と遊んだことを覚えていた。
しかし、写真には俺と二人きりで手をつないでいる謎の少女がいた。
「ウチは知らない。」
「うーん……ワタシも知らない、ソウタは誰とでも仲よく遊んでたから……。」
「ごめん、私もよくわからない。」
「左に同じくやな。」
八方塞がりだ。しかし、あまりにもこの娘が誰かを知りたくなっていた。話したことも覚えていないのにここまで惹かれるのはどうしてか、それも気になっていた。
とは言ってもどうしようもないので、俺は写真を鞄にしまい込む。
「そっか……ありがと!まぁ分からないものは仕方ない!」
皆、解散をし、俺が帰ろうとするとイリーナがおもむろに口を開いた。
「あのー、ちょっといいかな?」
「なんだ?」
「ワタシ……部活を作りたいんだけど……」
部活……部活ねぇ……
「ん?部活?」
「はい。」
部活ってあれか、あの放課後に自らを苦しめることによって自己鍛錬に励み、青春を謳歌せんとする者達のためのあれか。
「成るほど、却下だな。」
「話を最後まで聞いてって!」
こ、こいつ……俺が話を聞くまで体から離れねえつもりか。
イリーナは俺の腰に抱き着き、思い切り体の力を抜いた。このままイリーナを引きずりながら帰ってもいいが話くらいならいいか。とは言っても話を聞いたら最後、強制的に加入させられそうだな……。
「ワタシ、転校部作りたいです!」
さてはテメー、この学校から生徒をなくすつもりだなぁ?
イリーナの言っている意味が分からない、転校部?どんどん転校させる部活か?過疎化が著しくなるわ。
「なるほど、わからん。説明を頼む。」
「転校生のための部活です!友達作りをしたり一緒に遊んだり!」
「うーん……」
確かにそれはいい案である。転校したばかりの人は必ずしも友達が作れるとは限らない。コミュニケーション能力が乏しい人間には特に鬼門となるであろう問題だ。
しかし、『転校生』というのがなかなかいないのである。この学校に転校してきた人はこの5人、こんなことギネスブックに載るレベルだ。まず、教師たちは却下するだろう。
「これから先、転校生が来るとも限らないしな……異文化交流部、とかだったら通るんじゃないか?」
イリーナはもともとこの地域に住んでいたとはいえ、5年以上はロシアに住んでいたのだ。つまり、彼女との交流を名目にすれば転校生とのコミュニケーションも取れる部活となる。
「それは名案です!早速職員室に行ってきます!」
イリーナは教室から飛び出すとそのまま走って職員室のほうへと向かっていった。
いや……部活は3人以上いないと正式に認めてもらえないんだけど……。
「はぁ……まぁ、あと1人で部活に昇格だな。」
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