第4話 オジギソウ
6月から息子が育ててきたオジギソウが、花を咲かせた。
私は今まで、オジギソウの花を見たことがなかった。
茎の先に緑のボール状のものができた時は、ドキドキした。
息子と一緒に観察してみると、ボール状のものに小さな点が並んでおり、そこに花が咲く様子。
どんな花が咲くんだろう?
息子と楽しみに待っていた。
息子が寝坊した日曜の朝、オジギソウを見に行くと、様子が一変していた。
茎の先に、薄紫のほわほわしたものがくっついている。
よく見ると、あの小さな点一つ一つから薄紫の糸のようなものが飛び出し、全体としてポンポンのような球体になっているのだ。
最初、予想との違いに何だかわからなかったけど、すぐに気付いた。
オジギソウの花が咲いたんだ。
私は走って息子を呼びに行った。
こどもを、花の種に例える表現がある。
神様がくれた種は、育ててみないとどんな花が咲くかわからない。
育ち方は様々、花も様々。
マニュアルは無い。
例えば、アサガオを知らない人がアサガオの種をもらったら、突然伸びてきたツルに混乱するだろう。
一生懸命世話しているのに、思うように育ってくれない。他の花と違う。
そんな時、アサガオを知っている人が、「ツルが絡まるための棒を立てればいいんだよ」と教えてくれたら、お母さんもアサガオの子も、どんなにホッとするだろう。
その子その子のペースに合わせて、育てていけたら。
周りも、それを応援してくれたら。
期待と違う花が咲くこともあるかもしれない。
バラが咲くことを夢見て育てていたのに、タンポポが咲いたとして。
それを受け容れられないお母さんを、愚かだと嗤うことはできるんだろうか。
たとえ思っていた花と違っても、我が子を愛していることに変わりはない。
それなのに、苦しい。
大事だから、特別だから、親はこどもに思い入れる。
だからこそ、バラになれない、タンポポの子どもの苦悩もあるだろうけれど。
ありのままを受け容れるって、本当はきっと大変なこと。
一歩進んで、戻って、立ち止まって、また進んで……。
苦しみながら、傷つきながら、一歩ずつ踏みしめていく道のりの先に、ある気がする。
「みんな違って みんないい」の、言葉の重みを噛み締める。
チューリップ、ヒマワリ、コスモス、 シクラメン 。
この世界には、いろんな花が咲き乱れる。
一面に咲くチューリップは素敵。
でも、もしチューリップしか咲かなかったら、この世界はつまらない。
月下美人に蝿取草、 ベビーズティアーズ にラフレシア。
いろんな花が一緒に生きているから、
この世界は面白いし、美しい。
オジギソウの花を見た時、一瞬不意を突かれた。漠然と予想していたどんな花とも違ったから。
でも、感じたのは純粋な喜びだった。
ずっと育ててきたものが花開いた、喜び。
息子と一緒に「咲いたね!」と笑った。
息子や娘は、将来どんな花を咲かせるんだろう。
思いもよらない花を咲かせるかもしれない。オジギソウのように。
私は料理も掃除も苦手だし、こどもに振り回されてばかりで、お世辞にも良い母親ではないのだけど。
この子たちが咲かせる花を、一緒に喜べる母親でありたい。
そんな風になっていきたい。
オジギソウの花を見て、考えたこと。
さいた さいた
どの花みても きれいだな
🍀子育てで見つけた幸せ🍀
育ててきたものが花開くとき、きっと、幸せ。
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