第782話 2021/12/4 ディストピアとか

 本日は10時起き。快晴なれど北風がゴウゴウ鳴っている。冬期鬱襲来。

 昨日の夜、急に全身から力が抜けて、「ん、何だ。ひだる神にでも取り憑かれたのか?」と思ったのだが、腹が減っている訳ではなく、ちょうどその辺りから雨が降り出したし、そのせいかなあとも思ったものの、朝になっても体に力が入らない。そこでようやく冬期鬱に思い至った次第。はあ、これから数ヶ月これに付き合うのか。ああやだやだ、面倒臭いし鬱陶しい。せめて夜くらいは頭が回ってくれればいいが。


 小説なんぞを書いていると意味もろくにわからないくせに、ついつい知ったかぶりで使ってしまう言葉もあったりするものだが、虫けら的には「ディストピア」もその1つである。

 ディストピアと言えば、あらゆる情報がコンピューターの管理下に置かれる未来の超管理社会というイメージがあったりするものである。しかし、これはビッグブラザーでお馴染みのジョージ・オーウェル作「1984年」(読んでないけど)などの影響であろう。実のところ、ディストピアという言葉に超管理社会という意味は含まれていない。未来でなくても、コンピューターがなくても、超管理社会ではなくても、ディストピアはディストピアなのだ。

 ディストピアとはそもそもどういう意味かと言えば、「反ユートピア」「逆ユートピア」である。従って、「ユートピア」を理解しなければディストピアの意味は理解できない。

 ユートピアには「理想郷」という訳が当てられることがあるが、これは厳密には正しくない。ユートピア(utopia)とはギリシア語の ou (否定詞) と topos (場所)に由来する、「どこにもない場所」という意味の造語である。

 この言葉を造ったのは、イギリスの人文学者にして政治家のトマス・モアであり、彼の1516年の著書『社会の最善政体について、そしてユートピア新島についての楽しさに劣らず有益な黄金の小著』が初出であるとされる。つまり架空の島国の名前として考え出された名詞なのだ。

 この本の中でモアは、

「市民は平等であり、貨幣が存在せず、財産共有制が敷かれている。すべての人間が労働するために、少ない労働時間で十分であり、自由な時間を『精神の洗練』のために用いる」(日本大百科全書(ニッポニカ))

 とユートピアを描いた。これは当時のヨーロッパの状況に対する皮肉である。

 すなわち、

「君主は自分の富や領土を増大することのみに専念し、一方民衆は『囲い込み』によって土地を奪われ、牛馬よりもひどい労働を強いられている。国家や法律も貧しい人々を搾取するための『金持ちの共謀』による私物化にすぎない。このような諸悪の根源として貨幣経済、私有財産制がある」(日本大百科全書(ニッポニカ))

 というのがモアの見るヨーロッパ世界だったのであり、ならばこれこそが正しい意味でのディストピアなのであろう。

 つまり支配階級が私欲を追求し民衆を搾取する、国家も法律も民衆を守ってはくれない世界。それがディストピア。……ん? どっかにそんな国なかったかな?

 まあ何にせよ、ディストピア小説を書こうとするときにビッグブラザーを出さなきゃならないなんて理屈はないのだ。舞台を過去世界に置いてもいいし、ファンタジー世界に置いてもいい。徹底的に私欲を追求する強権的な支配者と、家畜の如く扱われ搾取され続ける民衆を描けばそれはディストピア小説になるはずだ。

 さて、来年6月に施行される改正動物愛護管理法では、動物販売業者に対し、販売する犬や猫へのマイクロチップの装着を義務づけているのだが、いまだ反対意見があるようだ。

「飼い主の連絡先が変わるたびに登録を変更するのは煩雑ではないか」

「かわいそう」

「装着後のペットの状態が心配」(以上NHK)

 などの声があるのだそうな。しかし犬猫が捨てられることが減る、もし捨てたら元の飼い主を探し出して罰金を支払わせられるというメリットの大きさを考えれば、米粒ほどの大きさのマイクロチップを装着するくらい何が可哀想なのかと思う。

 まあこういう話があると「ディストピア的だ」という批判は必ずと言っていいほど出て来るのだろうが、こんな情報管理ならドンドンやってもらいたいと個人的には思うところ。……そういやうちの犬はマイクロチップまだ装着してなかったな。もう1歳過ぎたし、今度獣医に聞いてみよう。


 NHKが映らないテレビしか持っていない場合に受信料契約を結ぶ義務があるのかどうかという裁判で、2日最高裁は原告女性の上告を棄却、女性に対しNHKとの契約義務があるとした高裁判決が確定した。

 放送法ではNHKを見られる受信機の所有者に契約義務を課しているのだが、NHKが見られなくしたテレビについて高裁は、「何ぞ手段はあるやろ」という理由でNHK側の主張を認めている。実際にそれが可能なのか確認はしていないし、原告女性に技術的、知識的にできるレベルのことなのかも確認していないようだ。

 ディストピアっていうなら、こういうのこそディストピア的だという気がしないでもないところ。


 3日、安倍晋三元首相が櫻井よしこ氏の主宰するインターネット番組に出演して、岸田首相に対し、

「(憲法改正の発議に必要な)3分の2の多数を形成する努力は簡単なことではない」

「岸田氏にしっかりと頑張ってほしい」(以上産経新聞)

 と述べたそうだ。他人事か。

 あんたが首相やってたときに選挙に勝った勢いを背に憲法改正にまで突っ走れば良かったのではないのか。それを意味のわからん草案出して世論の反発受けて失速してそのままになってるのが現状ではないのか。もうちょっと何とかならんかったのか、といまさら言ってもどうにもなりはしないのだが、無責任に「頑張れ」と言われても岸田首相だって困るだろう。何ともかんとも。


 短いが、本日はこんなところで。冬期鬱の解消法として、運動するとか太陽の光に当たるとかイロイロあるのだが、知識はあっても行動に移せる状態ではない。はあ、面倒臭い。この世のすべてが面倒臭い。でも腹は減るのだよな、腹の立つことに。

 昨日は1000文字ほどしか書けなかった。今日はどうだろう。まあ何とか頑張れる範囲で頑張ってみたい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る