第739話 2021/10/22 捲土重来とか

 本日は4時半起き。と書いているが、二度寝しそうな気がするなあ。現在外気温は14℃。エアコンで暖房を入れている。同じ失敗をそう何度も繰り返しはしないのである。まあ言い換えれば1、2回は必ずやらかすんだけどな。

 旧作「強請り屋 悪魔の羽根顛末」は推敲も終わった(終わらせた)ので、昨夜から更新を開始した。2、3日で全部上がるだろう。文章量が増えた分、読みにくくなっていなければ良いのだが。

 さあ、あとは新作を書く上でのネタを集めねばならない。まだボンヤリとしたイメージしかないからな、これを形にして行かなくては。江戸川乱歩賞までに間に合えば嬉しいのだけれど。


 中国の古典的な軍記物として有名な「項羽と劉邦」(このタイトルがついているのは日本だけだ)であるが、正直日本ではあまり有名ではない。司馬遼太郎氏の小説があるし、本宮ひろ志氏の漫画もあるのだが。キャラクターの違う二大武将が争い天下統一を競うという非常にわかりやすい題材であるから、日本人にももっと受け入れられそうに思うのだが、おそらく知名度的には「三国志」に遠く及ばない。「水滸伝」にも負けるかも知れない。何故なのだろう、不思議だ。

 ただまあ、日本人には二大巨頭のぶつかり合いより、弱者が圧倒的強者に立ち向かう判官贔屓的な物語を好む傾向があると言える面もある。「銀河英雄伝説」は人気があるが、もし自由惑星同盟内部のゴタゴタがヤン・ウェンリーの足を引っ張っていなかったら、あそこまで支持を得られたかどうか。「三国志」もしかり。呉がトリックスター的な立ち位置に立って、物語の基本としては劣勢な劉備を中心とした蜀のチームに、超人的支配者曹操を擁する強大な魏が襲いかかる、という構図になっているから受け入れやすかったのではなかろうか。蜀が強すぎても魏が弱くても成り立たなかったと思うところ。

 日本の歴史関連で力の均衡したライバル同士の戦いが人気を博した例としては、宮本武蔵と佐々木小次郎がある。しかしこれは宮本武蔵にまつわる長大なストーリーの中の1つのエピソードに過ぎない。徹頭徹尾この2人だけの戦いに終始していたら、こんなに人気にはならなかったろう。

 日本の軍記物と言えば平家物語や義経記があるが、どちらも二大巨頭のぶつかり合いではない。歴史的に見れば源氏と平家の戦いなので、天下を二分する二大勢力が争ったと言って過言ではないはずだ。なのにそれを題材としたこれら軍記物は、それを俯瞰的にマクロ視点で描かず、歴史の流れに翻弄される登場人物たちのミクロ視点に立って描かれる。

 あるいは関ヶ原の合戦から大坂冬の陣、夏の陣に至る徳川と豊臣のぶつかり合いは古今東西の様々な物語に描かれ人気を誇るが、秀吉が没した時点で豊臣家は衰亡すること前提で、対する徳川家は幕府を開き日本の支配者となるのが前提の物語だ。この話が人気だったのは、延々と続く徳川将軍の時代に不満を持った庶民のささやかな反抗であったのだろう。敗れ去る豊臣家に自分たちの姿を反映させながら応援したのである。これもまた判官贔屓の一種ではないだろうか。

 さて項羽と劉邦の戦いは劉邦が勝利し、やがて漢王朝(前漢)が成立するのだが――ちなみに当時の日本はいわゆる弥生時代である――そこからぐっと時代が下がって唐の時代(日本は飛鳥時代)の詩人杜牧とぼくが「題烏江亭(烏江亭うこうていに題す)」という詩で、敗れた項羽の自決を惜しんだ。その中にこんな一節がある。

江東子弟多才俊(江東こうとう師弟才俊していさいしゅん多し)

捲土重來未可知(捲土重来けんどちょうらい、未だ知るべからず)

 項羽の故郷である江東には優秀な人材が多いのだから、項羽が自決せず兵を集めていれば結果はわからなかった、という意味となる。この詩から生まれた故事成語が、読んでおわかりの通り「捲土重来」だ。一度失敗した者が、再び勢力を盛り返して攻め寄せることを意味する。「捲土重来を期す」「捲土重来を果たした」などと使われる言葉だ。なお虫けらのようにことごとく負けてばかりでは捲土重来もへったくれもない。十分に力量のある者に対して使われる言葉である。

 唐の時代からグーンと時を飛び越えて21世紀、2020年のアメリカでは共和党と民主党の二大勢力が大統領選挙でぶつかっていた。トランプ共和党対バイデン民主党の戦いはバイデン氏に軍配が上がり、トランプ氏は退場することになる。しかしトランプ氏はいまだ敗北を認めず、いまでも自分こそがアメリカ合衆国の正統な大統領であり、バイデン氏は退場すべきだと訴えている。

 しかしアメリカの国内世論は彼に冷たく、Twitterをはじめとするソーシャルメディアはトランプ氏のアカウントを凍結したままだ。これに対しトランプ氏は以前から自前のソーシャルメディアを立ち上げると主張していたのだが、なかなか具体的な動きが見えなかった。公式サイトで自らの主張を表明していたが、これでは拡散力が小さい。果たしてこのままトランプ氏は消えて行くのか、そうヤキモキしていた支持者もいただろう。

 だが現地時間の10月20日、トランプ氏は自らが経営するメディア企業Trump Media & Technology Group(TMTG)を通じプレスリリースを出した。それによれば新しいソーシャルメディア「TRUTH Social」を間もなく立ち上げ、11月から招待制のベータ版を開始するらしい。

「私がTRUTH SocialとTMTGを作ったのは、ビッグテックの暴政に立ち向かうためです。我々は、タリバンがツイッターで大きな存在感を持つ世界に生きているが、皆のお気に入りの米大統領は沈黙させられている」(TechCrunch Japan)

 と声明で述べている模様。

 おそらくこのサービスが開始されれば、アメリカの左派メディアは徹底的に叩き、ネガティブキャンペーンを張るだろう。その嵐に耐えられるかどうか。トランプ氏の捲土重来がなるか、見物ではある。個人的にはトランプ氏は嫌いなタイプの政治家なので、このまま潰れてくれても問題ないのだが、別段バイデン氏を支持する理由もない。したがって、純粋に娯楽として見物できる。この争いにかまけて中国やロシアへの意識が散漫になるくらいなら、バイデン氏は引きずり下ろされた方がアメリカのためであろう。いろんな意味で今後のアメリカを占う動きになるかも知れない。


 移植医療の分野において、ブタは結構重要な存在である。ブタの内臓は人間に移植できるはずだという観点からの研究は、数十年前から行われてきた。この手の研究は、ザックリ分けると2パターンある。

 1つはブタに人間の遺伝子を組み込み、人間の内臓そのものをブタの内部に作り出し、それを人体に移植しようというもの。

 もう1つは免疫反応が出ないような遺伝子改造を加えた個体を使用するものの、ブタの内臓そのままを人体に移植しようとするもの。

 この2つのパターンが、おそらく日本を含め世界各国で研究されているはずなのだが、ニューヨーク大学ランゴーン医療センターの医師らが先月25日、ブタの腎臓を脳死状態の患者に対し、一時的に移植する手術に成功していたらしい。今回のパターンは上記の例では後者に当たる。

 あくまでも一時的、それも腎臓は体内に収めず、体外に置いたままであったらしいが、それでも人間に繋ぐことができると実践で証明できたのは非常に大きな実績だろう。いずれ内臓疾患の患者はドナーの登録を待つことなく簡単に移植手術ができる時代がやってくるかも知れない。夢が広がるのは素晴らしいことだと思う次第。

 ただ、内臓を取り出した後のブタはどうなるんだろうな。たぶん食用には適さないと思うのだが。


 日本では警察への緊急通報は110番だが、ニュージーランドでは111番なのだそうな。その111番にある日、4歳の男の子から電話があったらしい。

「見てもらいたいおもちゃがあるの」

「ここへ見に来て!」(以上CNN)

 これに対して警察は近くにいた警察官を現場に向かわせ、警察はそのときの様子をFacebookに投稿した。

「南部地区警察のカート巡査はこの子どもの家を訪問し、たくさんのおもちゃを見せてもらいました」

「巡査はまた、この子どもや両親と対話して、111は緊急時のみ使用することを教えました」

「子どもがおもちゃを見せるために111に電話することは奨励しませんが、あまりに可愛かったので共有せずにはいられませんでした」(以上CNN)

 と述べている。

 ほのぼのとしたいいニュースである。だが、単にほのぼのした話題ではない。今回はただオモチャを見せてもらっただけで終わったが、子供からの緊急通報が常に笑い事で済む訳ではないのだ。子供からの通報だからと知らん顔をせず、警察官を向かわせた地元警察の対応は賞賛されてしかるべきだろう。

 警察も無限に人員がいる訳ではないのですべてに対応するのは無理なのは理解しているが、それでも可能な限り、できるだけ万が一のことを考えて対応に当たっていただきたいと願うところ。


 本日はこんなところで。新作ミステリーはまだ資料とか調べていないのだが、どうなるのだろう。金がかからないといいのだが。ネットで調べられる情報だけで書けると経済的には有り難い。さあて、どうなるのやら。

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