第578話 2021/5/14 焚書とか

 本日は5時半起き。体調は相も変わらず。ああ、業務スーパーがネットスーパーやってくれたらなあ、とつくづく思う。体が動かせなくても腹は減るのだ、何とも困った事に。

 タマノイの「すしのこ」は常備してあるので、あとは海苔と具材さえあれば寿司が食えるのだが、イオンとかその辺のスーパーの海苔は、香りも味もないただ単なる黒い紙だし、具材も高い。業務スーパーの「マグロたたき」「サーモンたたき」とか売ってないしな。辛子明太子の中身だけのヤツもない。仕方ない、今日のところは手持ちのカニカマでカニ風寿司でも食うか。


 書物が広く一般の手に渡ったのはグーテンベルクが活版印刷を発明して以後の事であるとは言え、それ以前に書物がなかった訳ではない。特に中国では手書きの書物が広く書き写され流通していた。書物の広まりは学問の広まりであり、国の知的水準を引き上げる事ではあったのだが、為政者にとっては頭痛の種でもあった。今も昔もそうだが、国家を運営するに当たって国民は、政府の言うことにハイハイと従う馬鹿であってくれた方が簡単なのだ。

 国民が知恵をつけると政府を批判し始める。批判が広まると国家を転覆させる騒動へと発展しかねない。民主主義国家なら選挙で国民の信を問い、場合によっては政権が交代する事で国家は継続されるが、専制国家ではそうも行かない。

 そこで中国を初めて統一したとされる始皇帝を始めとして世界の権力者たちは、時折国民の反抗心を押さえつけるために書物を狩り集め、これを燃やした。支配者側の強硬姿勢のデモンストレーションであり、同時に国民側から知識を奪い知的水準を低下させる実用面でのメリットもあった。この行為を一般的に「焚書ふんしょ」と言う。

 特に始皇帝の場合、焚書と同時に当時の先端学者であった儒家を集めて生き埋めにしたとされる。これを「焚書坑儒」と呼び、始皇帝を批判する際にたびたび引き合いに出される。始皇帝が目論んだのは国民の知的水準を低下させ統治を容易にする事だったのだろうが、これは今風に言えば情報統制である。現代の中国は始皇帝以来の伝統を受け継いでいると言っても良いのかも知れない。まあ見方を変えれば始皇帝の呪いに縛られているとも言えるのだが。

 もちろん、中国の歴史上――支配民族が変わるなどした際に――何度も焚書が行われたであろう事は想像に難くないとは言え、それが徹底していなかったのは言うまでもない。徹底していたら史記だの十八史略だの三国志だの論語だのが現代にまで受け継がれているはずがない。どんな時代でも、学問を後世に残そうとした人々はいたのだ。

 9世紀頃、唐の終わり頃に章碣しょうけつという詩人がいた。彼は『焚書坑』と題される詩を残している。

◇ ◇ ◇

竹帛煙銷帝業虛,

關河空鎖祖龍居。

坑灰未冷山東亂,

劉項原來不讀書。

◇ ◇ ◇

竹帛ちくはくの煙えて 帝業虚し

関河かんがむなしくとざ祖龍そりゅうきょ

坑灰こうかい未だ冷えざるに 山東さんとうみだ

劉項りゅうこう 元来 書を読まず

◇ ◇ ◇

(民を愚かにしようと)書物を焼いた煙が消え、始皇帝の覇業はあとかたもない。

函谷関かんこくかんと黄河は始皇帝の宮殿を空しくとざしている。

書物を焼いた穴の灰がまだ冷めないうちに山東が乱れだしたが、

劉邦も項羽も、もともと書物を読まないではないか。

◇ ◇ ◇

 余所のブログからパクってきた翻訳であるが、要するに始皇帝を批判している、と言うよりあざけっているような内容と言える。ただ、詩には書物を焼いた穴とあるが、始皇帝の焚書について、穴に書物を放り込んで焼いたという記録はないらしい。

 さて今月6日、中国のデリバリー大手「美団」の創業者兼最高経営責任者(CEO)である王興氏が、SNS「飯否」に上の焚書坑を書き込んだ。どういう意図であったのかは不明であるが、これを読んだ他のユーザーが「政権批判なのではないか」と騒ぎ出したようだ。その後この詩は削除されたものの、美団の株価は6日から11日にかけて13%あまり低下、約300億ドル相当の時価総額が吹き飛んだとCNNは報じている。

 日本の政治は問題点が多いと言われる。実際新型コロナやオリンピックへの対応を見ているとグダグダで目を覆わんばかりの惨状である。だがそれでも、政権批判は許されている。ブログであろうとSNSであろうと小説投稿サイトのエッセイやコラムであろうと、ダメなものをダメと言う事は誰にも邪魔されないのだ。この一点だけを見ても、日本に生まれ育った事を喜ぶべきではないかと思うところ。


 キューバ駐在のアメリカ外交官が様々な原因不明の不調をきたす、いわゆる「ハバナ症候群」であるが、他に中国やアメリカ本土でも発生していると言われていた。しかし12日にニューヨーク・タイムズが報じたところによれば、ヨーロッパや中国以外のアジアでも起こっており、「被害者」は130人以上に上るらしい。

 もしこれが人為的な攻撃であったとしても、まさかキューバ人が世界中を駆け巡っているとも思えないしな、複数の国家が絡んでいると考える方が自然なのかも知れない。

 ただ普通に考えて、それなりの被害を出すためにはそれなりに大規模な装置が必要となるのではないか。そんな物を持ち歩く訳にも行くまい。ならば建物内部かどこかに設置されているのだ。果たして探し出せないものなのだろうか。


 原因があって結果が生まれる。因果は巡る糸車などと言うが、これは世界を極めて簡略化した考え方である。世の中そんな単純な事ばかりではない。もし原因の段階と結果の段階が明確に分かれているのであれば、世界の諸問題はすべて「そもそも論」で解決できる。だが現実はそうではない。

 その典型がいま大騒ぎになっているパレスチナ情勢である。どっかの防衛副大臣は「最初にロケット弾を一般市民に向け撃ったのは一体誰だったのか?」などと言っているが、そもそも最初にパレスチナの一般市民にゴム弾を発射したのはイスラエルが先であるし、そもそもパレスチナ人が暮らしていた土地に勝手に侵入し国家を無理矢理建設したのがイスラエルだ。

 ただし、いまイスラエルのある場所は、そもそもパレスチナ人が来る前にはユダヤ人国家があった場所ではある。もっとも、そもそも古代のユダヤ人だってどっかから移り住んで来たはずだ。なのに歴史の特定の部分を切り出して「だから我々に正当性がある」と主張するから、そもそもおかしな話になっているのだろう。

 13日の段階で、パレスチナ自治区のガザではイスラエルの空爆によって死者が103人、負傷者は580人に上っている。一方イスラム武装組織ハマスのロケット弾によるイスラエル側の死者は7人だ。双方が公開している数字を信頼するならば、だが。

 今後数字はドンドン増えて行くだろう。主にガザの死者数が。

「アメリカは中国が新疆でジェノサイドを行っていると言いながら、イスラエルがパレスチナで行っている虐殺には何も言わない」

 と中国外務省の報道官が言い出すのは時間の問題と言える。何としてもこの戦いを早急に終息させなければならないのだが、どうすれば終わらせられるのか当事者ですら知らないのだろう点が非常に難しい。何せ達成されるべき目標がないからな。

 これが戦国武将なら、相手方の大将の首を取れば目標は達成され、戦いは終了する。あるいは領土紛争なら、領土が奪われるか、もしくは返還されれば戦いは終わる。先般のアルメニアとアゼルバイジャンの争いなどが領土紛争の典型例である。

 しかし、イスラエルの最終目標がガザとヨルダン川西岸のパレスチナ自治区をすべてイスラエル領土とした上でエルサレムを首都とする国家を完成させる事であるのに対し、パレスチナ側の最終目標はエルサレムを首都としたパレスチナ国家の建設である。別々のところに分かれて国家を建設するという考えが双方にない。エルサレムだけは絶対に譲れないのだ。となれば、理屈で考えた場合、どちらかが全滅するまで戦うしかない。

 とは言え21世紀にもなって、民族絶滅戦争など国際的に許されるはずもない。つまりイスラエルもパレスチナも最終目標は達成不可能となる。すなわち達成目標を持てない。従って目標がないから戦いを容易には終わらせられないのだ。

 14日、地上部隊がガザ地区に入った事をイスラエル軍が認めている。ハマスを本気で殲滅するつもりなのかも知れない。戦いの長期化と激化は避けられまい。ハマスは泥沼のゲリラ戦に持ち込むだろう。イヤな話題はしばらく続きそうだ。もっとも、日本で暮らす我々はそれさえも日常としてしまうのだろうが。


 本日はこんなところで。昨日は400文字ほど書けたのかな。ゼロよりはマシな程度。まあ何とか今日もできる範囲で頑張ろう。

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