第90話 2020/1/12 雉も鳴かずばとか

 一昨日の約3時間椅子に座りっぱなしの影響は、今朝まで残っていた。何と虚弱な。もう新幹線で東京まで移動とか無理だな。とは言え、しんどかったものは仕方ない。今朝は9時半起き。もうグッタリである。


 ことわざと言えば、物凄く古い言葉というイメージがある。例えば「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」は中国の書『顔氏家訓』に由来するが、これは6世紀後半に書かれたとされる。日本なら飛鳥時代より前の古墳時代だ。

 対して似たような状況でありながら反対の意味を持つ「雉も鳴かずば撃たれまい」は、日本生まれのことわざである。石川県の民話に由来するのだが、この民話の中で、雉は猟師に火縄銃で撃たれている。従って、このことわざは古くとも安土桃山時代以前には遡れない。普通に考えれば江戸時代か。

 まあ、現代から見れば江戸時代でも古いのは間違いないが、歴史的に見ればつい最近と言える。「大山鳴動鼠一匹」など紀元前の古代ギリシャだからな。格が違う。

 さて話はまったく変わって、2018年にインドネシアと、2019年にエチオピアでボーイング737MAX8型機が墜落したのは誰もが知る事だが、それに先立つ2017年、ボーイング社の社員は同型機について、

「道化たちによって設計され、その道化たちは猿によって監督されている」(AFP)

 と、メールに書いていた事が判明した。猿とは連邦航空局(FAA)を指しているのだそうな。

 また別の社員は2018年、エチオピアの事故の7箇月前に、

「MAX型機のシミュレーター訓練を受けている者の飛行機に自分の家族を乗せるか? 私は乗せない」(AFP)

 と、メールにつづっていたのだそうな。

 飲食店の厨房で働いている者は、自分の店の料理を食べたいと思わない、などという話はよく聞くが、航空機の製造現場でも似たり寄ったりの事が起きているのだろうか。737MAXが墜落したとき、ボーイングの社員たちは「ああやっぱりな」と思ったのだろうか。だとしたら、死んだ人々も浮かばれまい。

 ボーイング社としては、このメールの公表は「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず」を狙っての事だったのだろうが、内容の酷さを鑑みれば、この先ボーイング社には更なる批判が集まろう。やがてそれは、今回公表されたメールが誰の書いたものか、という犯人捜しを呼ぶのかも知れない。いま社内は戦々恐々としているだろう。メールを書いた者たちは後悔しているだろう。そしてそれ以外の者たちはこう思っているはずだ。「雉も鳴かずば撃たれまい」と。

 それでも、これは「大山鳴動鼠一匹」にしてはなるまい。ボーイングの飛行機は世界中を飛んでいるのだ。いつ頭の上に鉄の塊が落ちて来ないとも限らない。徹底した解明が待たれるところ。


 2日間休んでいる間に、世界は動いていた。11日、イランがウクライナ航空機の撃墜を認めた。ロウハニ大統領がTwitterに、

「イラン・イスラム共和国は悲惨な過ちに対して深い遺憾の意を表明する」

「軍の内部調査は、遺憾ながらも人的ミスにより発射したミサイルが、ウクライナ機の凄惨せいさんな墜落と、罪のない176人の死を招いたと結論付けた」(以上AFP)

 と書き込んでいる。また、ザリフ外相も、

「米国の冒険主義が引き起こした危機的状況の中で、人的ミスが悲劇につながった」

「イランは全ての犠牲者の遺族、関係国に深い遺憾の意、また謝罪と追悼の意を表明する」(以上AFP)

 と同じくTwitterに書き込んだ。

 人を死なせた公式発表をTwitterで済ませるのはどうよ、と思わないでもないが、まあいまの時代を象徴していると言えなくもない。しかしそもそも人的ミスというのは、どのレベルのミスなのだ。現場の兵士がついうっかりミサイルの発射ボタンを押したというのか、それとももっと上のレベルが撃墜命令を出したのか、それによってイロイロな事が変わってくるようにも思うのだが。これから先、その辺も明らかになってくるのだろうか。

 また11日、イラン国内では撃墜の被害者を追悼する集会が開かれたのだが、これが政府に対する抗議デモへと発展した。まあ気持ちはよく理解できる。参加者は、

「うそつきには死を」「責任者の辞任では済まされない」(共同通信)

「政府は、何が起きていたか最初からわかっていたはずだ。最悪のうそをついた」(NHK)

 などと声を上げていたという。イランではここ最近反政府デモが続いていたが、今回の撃墜事件は新たな火種を投下した形になるに違いない。例によってアメリカのトランプ大統領は、このデモに支持を表明している。

 イラン政府はまだそれなりに強気の姿勢を保ってはいるが、いまのままではアメリカだけではなく、世界中を敵に回す事になるくらいは理解しているはずだ。何とか態度を軟化してもらいたいと願うところ。


 これに関連して、11日から安倍首相が中東を歴訪している。サウジアラビアやアラブ首長国連邦、オマーンなどを訪れるそうだが、オマーン辺りでイランの関係者とも接触するだろうか。

 正直、虫けらは安倍首相に期待はしていないものの、せっかく行くのなら何かの役に立ってもらいたいと思うところ。もちろんすぐに結果が出せるような簡単な事柄でもないのは理解している。

 なおこの歴訪、中止になったと時事通信が報じたのだが、結果的に誤報であった。しかし時事通信の訂正記事は目にしていない。それどころか、当たり前のように首相の中東歴訪を報じている。何とも面の皮厚し。


 11日、台湾では総統選と立法院の議会選挙が行われ、蔡英文総統が得票率約57%の817万票余りを得て再選、立法院でも与党民進党が113議席中61議席を獲得するなど大勝した。投票率は74.9%だった。

 まあ香港の現状を見れば、台湾の人が中国を恐れるのは当然であろうし、ならば独立志向の蔡英文氏に総統の職を担ってもらいたいと願うのも当たり前である。中国共産党は悔しがっているだろうが、自業自得と言える。

 ただし、これにより台湾と中国の関係が緊張感を増すのは必然である。蔡英文総統には非常に難しい舵取りが求められる。日本は台湾と協調すべきだと思うのだが、日本の権力者の中には中国シンパも多いので、簡単には行かない。経済界からの反発もあるだろうしな。

 しかし、安倍首相がもし台湾を国家として認め、安全保障条約を結ぶ方針を打ち出せたりするのなら、いま以上の爆発的支持率を得る事もできるように思う。安倍首相にできないのなら、次の首相にはできるよう自民党が動いてもらいたいのだが、無理か。


 今日はこんなところで。はあ、まだ少しダルい。

 昨日は2000文字ほどしか書けていない。ああ、頑張らないとなあ。『魔獣奉賛士』はともかく、ミステリーの方には9月末に締め切りがある。まだ先と言えなくもないが、あと7万字ほど書かねばならない。推敲の時間も必要だし、そうそう時間は余っていない。何とか自分のケツを蹴り上げねば。

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