第28話 2019/11/11 人権とか

 本日は9時起き。犬の散歩は何とか行けたものの、戻って来てしばらくすると、急に雷がゴロゴロ鳴り出して、途端に叩き付けるような大雨。いやあヤバかった。雨の予報なんてなかったはずなのだが。雨は昼前に上がり、空には晴れ間も見えている。このまま晴れ上がってくれると有り難いのだけれど。


 公益財団法人人権教育啓発推進センターによれば、人権とは「私たちが幸せに生きるための権利で、人種や民族、性別を超えて万人に共通した一人ひとりに備わった権利」であるという。これはすなわち国家や憲法以前のものとして、人権は存在するという考え方である。まあ、それはそうだ。憲法や政府が変わるたびに人権が剥奪されたのではたまらないからな。

 ただそれでも、人権は無制限に守られるべきかと言われると、ちょっと困る。それを言いだしたら、犯罪者を警察が捕まえるのは人権侵害なのではないかという事にもなる。刑罰を科して刑務所に閉じ込めるなどもってのほか、と言う声も上がるだろう。社会を安定的に運営するなら、人権を制限しなければならない場合がある事は前提とすべきだ。

 さて2014年の12月19日、アルゼンチンの控訴裁判所は人権を巡るある一つの判断を下した。動物擁護団体『動物の権利を守るための公務員と弁護士の会』(AFADA)が訴えていた、ブエノスアイレス動物園で飼育されているオランウータン『サンドラ』には「不当な監禁から解放される権利」が存在するという主張に対して、サンドラは「人間ではない人」であり、誤って自由を奪われていると認めたのだ。

 これによりサンドラはブエノスアイレス動物園を出る事になった。とは言え、野性には返せない。なぜならサンドラはドイツの動物園で生まれてアルゼンチンにやって来た、野生をまったく知らないオランウータンだったからだ。

 そこで紆余曲折を経た結果、今月の5日から、アメリカのフロリダ州ウォーチュラにある保護区『類人猿センター』でサンドラは暮らしている。ちなみにこのセンターは、マイケル・ジャクソンの飼っていたチンパンジーであるバブルスが飼育されている場所としても知られている施設である。

 類人猿センターは動物園ではない。よって人間の眼に晒される事もなく、そういう意味ではストレスの小さい場所と言えるのだろう。ただ「人間ではない人」の暮らす場所として適切なのかはわからない。結局のところ閉じ込めてるのは変わらないんじゃないのか、という見方もできなくはない。

 何をもって正解とするのか、ベストを目指すべきかベターを選ぶべきなのか、そもそもオランウータンを「人間ではない人」とした事それ自体が正しい判断だったのか、考え方はイロイロあるだろう。唯一の絶対的解答など見つかるとは思えない。ただ仮にサンドラに人権があるにせよ、人権は社会の要請があれば、ときとして制限されるものである事は考慮する必要があろう。いまはサンドラが心静かに平穏な暮らしを送ってくれる事を祈るばかりである。


 さて昨日は天皇陛下の即位祝賀パレード『祝賀御列の儀』が行われた。浮かれた馬鹿が素っ裸でパレードの前に飛び出したりしないものかとワクワク……ではなく、ドキドキしながら見ていたのだが、さすがに厳重な警備を敷いただけあって、一切トラブルなどなくパレードは終了した。

 まあ、そのパレードを見物していた連中の中にろくでもないのが混じっていたという話はチラホラ聞こえてはくるが、こればかりは仕方ない。日本人も所詮は普通の人間の集団である。立派な人物も居れば見下げ果てたクズも居る。虫けらだって居るのだから、当たり前っちゃ当たり前だ。

 しかし結果的には何事もなく終わったのだ。それはその場に居た大半の人々が、ただ純粋に心から天皇陛下のご即位を祝った証と受け止めるべきだろう。さあ次は14日の大嘗祭だ。生中継はあるのだろうか。我々はどこまで見られるのだろう。期待したい。


 ここのところ専門家について書く事が多い。専門家はその筋その界隈では、ある意味神様のような存在と言える。その知識や経験の量、考えの深さに、専門知識を持たぬ我々は圧倒されるのだ。だが、実際のところ専門家は神ではない。結局はイロイロな意味で普通の人間である。闇を抱えた部分を含めて。

 9日早朝、ロシアのサンクトペテルブルクを流れるモイカ川で、酔っ払って川に転落した63歳の男が救助された。単にそれだけならたいした事件ではない。だが男は著名な学者だった。サンクトペテルブルク大学の近現代史学科教授で、フランスの皇帝ナポレオンに関する研究を専門とし、著書を多数出版している他、映画の歴史考証などを担当するほど高名で、2003年にはフランスのシラク大統領から最高勲章であるレジオン・ドヌール勲章を受けている。

 それでもここまでなら、有名人のお騒がせ事件で済んだ話である。彼の所持していたバックパックから、人間の腕が見つかりさえしなければ。どうやら、切断した死体を川に捨てようとして、自分が川に落ちたらしい。警察が彼の自宅を家宅捜索すると、サンクトペテルブルク大学卒業で、この男の著書の共同執筆者でもあった24歳の女性の切断死体が見つかった。

 さて、この女性と男とはどんな関係だったのだろう。ミステリー脳で考えるなら、単なる共同執筆者ではなかったのかも知れない。物語性を重視するなら、最初は教え子として寵愛していたが、彼女の有能さに男が嫉妬し、殺意が芽生えてしまったという解釈もある。

 もちろん、本当のところはわからない。そもそも人の死んでいる話をアレコレ詮索するというのは少々不謹慎である。いずれ真相はロシアの警察が明らかにすることだろう。まあ、プーチン大統領に関係していなければ、であるが。

 

 何か晴れたり曇ったり、天気が不安定である。天気予報ではもう雨はない模様なのだが、これはひょっとすると、ひょっとするかも知れない。午後の散歩はどうしようかなあ。ちょっと迷うところ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る