第15話 2019/10/29 化学変化とか

 本日は8時半起き。雨。外が暗いし体が重いし。今日は一日降るのだろうか。何とも陰鬱。でも悪い事ばかりではない。餃子が届いた。これでしばらくは食べる物に苦労しなくて済む。何せ150個だからな。毎日10個ずつ食べても2週間は何も考えなくて良い。実際には間に何か別の物を食べるだろうし、当分楽が出来るというものである。毎日献立を考える主婦の人は大変であるなと思う次第。


 生物の体とは、生きた化学工場である。常に体内で化学変化を起こしながら生活している。いや、生活とは生命活動の事であるなら、化学変化それ自体が生活そのものと言って良い。

 たとえばこうやって文章を書いているとき、脳はブドウ糖を消費している。そのブドウ糖がどこから来るかと言えば、グリコーゲンの形で肝臓や筋肉に蓄えられていたりするのだが、これらは主に食べた物の糖質を変化させたものだ。

 だがそれでは、糖分を接種しなければグリコーゲンは不足するのかと言われれば、必ずしもそうではない。ブドウ糖はアミノ酸がつながった鎖である。この鎖がもっと長くなればタンパク質などに変わる。すなわち、タンパク質を摂取すれば、体内でアミノ酸に分解し、それをさらにグリコーゲンに変換する事も可能なのだ。

 事ほど左様に、人間を初めとする生物の体内では常に化学変化が起き続け、いろいろな物を作り出しているのだが、中にはちょっとビックリするような物が出来る場合もあったりする。

 アメリカのノースカロライナ州で、ある40代男性の運転する車が警官に止められた。これ記事には書いていなかったが、察するに車がふらついていたのではないか。警官は男性にアルコール検知用の呼気検査を要求したが、男性はそれを拒んだ。そのために男性は連行され、病院で血中アルコール濃度を検査された。結果、0.2%のアルコールが検出、これは許容量の約2.5倍、1時間にアルコール飲料10杯を飲んだほどの量だという。

 だが、男性は飲酒を否定した。もちろん警官も医者も信じない。信じるはずがない。ちゃんと証拠が出ているのだから。しかし、リッチモンド大学医療センターが詳細な検査を実施したところ、男性の言葉が事実であると判明した。何とこの男性、腸の中にイースト菌が居て、体内で糖からアルコールを発生させていたのだ。これを『腸発酵症候群』といい、腸内環境が崩れてイースト菌が棲み着くと起こるらしい。

 どうやら抗生剤を飲んでいた事に由来しているようなのだが、抗真菌療法やプロバイオティクス療法で腸内環境を整えた結果、症状は出なくなったそうだ。めでたしめでたし……か?

 何かモヤモヤする事件である。確かに、体内にアルコールが発生していた事についてはこの男性に罪はない。だが酒を飲んだような状態になる事は、さすがに自分で気付いていたはずだろう。なのに車を運転していた事実からは、安全軽視という言葉が浮かんでくる。まあ、アメリカは広いから車に乗らずに生活など出来ないのかも知れないが、この先の安全運転を願わずには居られない。


 24日から再開されたイラクの反政府デモでは少なくとも63人が死亡し、2592人の負傷が確認されているそうだ。アブドルマハディ首相は25日にテレビ演説を行い、内閣を改造し、大統領や首相など政治家の給与を引き下げると発言したそうだが、この辺はチリで起きている事と重なる。何とかガス抜きをして自らの立場を守ろうと苦心しているのはわかるが、根本的な問題解決にはほど遠い。

 イラクのデモを事実上主導しているのは、サドル師である。27日には議会のサドル派である『サイルン連合』が公式に政府に対する反対派となったと表明し、またサドル師も同日声明を発表し、政府を退陣させるよう議員たちに要請している。

 首相が自分の立場を守りたいと願うなら、いま何とかしてすべきはサドル師との対話であろう。無論、簡単な話ではない。「お前が気に入らない、辞めろ」という相手とマトモな会話になるとも思えない。だがこのままデモを放置すれば、いずれ首相の命に関わる問題へと発展しようし、隣国イランが大々的に介入してくる可能性だってある。そうなれば、イラクという国家の存亡の危機となる。

 話し合って理解し合えなどという無茶な事は言わない。人は話し合っても理解など出来ないからだ。だが、取引は出来る。損得勘定で会話を成立させる事は可能だ。せっかく国内のISを壊滅させたのである。何とか国を安定させてもらいたいと願うところ。


 ISといえばテロであるが、オーストラリアのビクトリア州では、人の居る場所に故意に突入してきた車両の運転手を射殺する権限を、警察に与えたそうだ。いままでなかったのかという気もするが、これはオーストラリア国内では初であるという。物騒な話ではあるが、これも時代の要請であろう。助かる人が1人でも増えれば良いのだが。


 極端な方向性の勢力が躍進するのも時代の要請か。ほんのちょっと前まで議席を獲得するだけで話題となっていた『ドイツのための選択肢(AfD)』だが、27日に東部テューリンゲンで実施された州議会選挙では23%の票を獲得して第2党となった。ちなみに第1党となったのは30%近くの票を獲得した極左の左派党。

 メルケル首相が率いてきたキリスト教民主同盟(CDU)は22%でAfDの後塵を拝し、CDUと大連立を組んできたドイツ社会民主党(SPD)は8%の惨敗であった。もはや2大政党の時代は終わったという事だろうか。

 これ日本にも無関係ではないと思うのだけれどな。日本の野党は中途半端な方向性の政党ばかりである。おかげでまったく人心を掌握できていない。ここ最近で例外であったのは『NHKから国民を守る党』であったろうか。もちろん、N国党に期待などまったくしていないのだが、方向性を極端に振れば、自民党以外にも票が集まる可能性を示唆した点は大きいと思う。

 もう中途半端な「正しさ」など、誰も求めていないのである。破壊的なまでの明確さを人々は求めているのではないか。そういう意味では共産党ですら甘い。本当に自民党政権を何とかしたいのなら、野党は先鋭化を進めるべきだ。誰が見ても「こいつらはヤバい」と思えるような政党になれれば、まだ一発逆転のチャンスはあるように思うのだが。

 たとえば『3%党』なんてどうだろう。公約は2つ。消費税を3%に引き下げ、防衛費をGDPの3%に引き上げるのだ。そのくらい極端でも、まだ足りないくらいだと個人的には思うところ。


 政府は本日の閣議で、先般の台風19号の被害について、被災自治体への財政支援を強化する「激甚災害」と、復旧事業の一部を国が代行する大規模災害復興法に基づく「非常災害」に指定すると決定したそうだ。まあ当然と言えば当然で、驚く点はないのだが、問題はこの指定の実行力である。ちゃんと被災地が完全に復興するよう、最大限の強さと速さを与えるべく予算と人員を配置してくれるのだろうか。

 東日本大震災の被災地ですらまだ復興が遅れている現状である。指定だけしてあとは現場に丸投げとかはやめてもらいたい。


 さて、『キリン解剖記』は昨日1日で読み切ってしまった。面白い。大変に面白かった。「専門家」とか「その道のプロ」などの言葉に心惹かれる方には特にオススメである。プロフェッショナルがいかにして誕生するのかの過程が簡潔に描かれている。おそらくキリンの解剖にかけては世界屈指の技術と経験を持つであろう著者の、研究者としての半生記が面白くない訳がない。まあ半生記と言っても、これから先の学者人生の方がずっと長いのだろうが。

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