第208話 ビジョンパルスお姉ちゃんとのお話 その2


 俺の未来が彼女に見えてるのか?

 責任ある立場って……。

 未来の俺、出世してるんだな……なにかで。


 理由のわからない感慨深さに、感心してると、ビジョンパルスはいたずらっぽく微笑み、顔をグイッと近づけてきた。


 良い匂いが鼻腔を侵略し、まるっこい紅瞳が俺の瞳をのぞきこんでくる。

 あと頭の横からズズッと伸びてる尖ってない角先が、コツっと俺の額に当たってる。ちょっと痛い。


「うん、そう、なるほど。だとしたら、この時点で確定してるよね」

「ぉ、えっと、ビジョン、パルス、さん……近いっていうか、近い……」


 腕がなく、上手く対応できない。

 たぶん、自分が顔真っ赤してる気がするのが、ほんとうに恥ずかしい。


「アーカムちゃん、プライドと世界の命運、両方救う冴えたやり方があるんだ。それは、つまり、ワタシたちが頭を下げず、勝手に世界を救ってくれる正義の秘密結社とかがいたら、最高に都合がいいわけね」

「……正義の秘密結社、ですか」


 急に、肝を冷やすような単語が聞こえてきて、言葉につまり、結局、露骨に黙ってしまう。


「……」

「アーカムちゃん、狩人協会って知ってる?」

「……どうですかね」


 ビジョンパルスが動かないなら、俺が狩人を異空間に招こうと思ってた段階で、迫真の言及。


 嘘が下手くそな不器用みたいに、えらく拙い返事をかえしてしまう。


「ふふ、可愛いなぁ〜よしよし♪」


 頭を撫でられる。負けました。


「いやね、ゲートヘヴェンが言ってたんだよね。『われのアーカム、恐らく狩人に違いない』ってね。ほら、彼さ、嘘くらいなら見抜けるから、さりげない誘導尋問でバレちゃってたんだよ。あ、ちなみにワタシにも嘘は効かないから、そこは気をつけるようにね」

「ゲートヘヴェンさん、鈍感天然系かと思ってたけど、以外とそういうことするんですけね……」

「ふふ、ドラゴンは賢い生物だからね」


 自慢げに鼻を鳴らし、ビジョンパルスは腰に手をあてる。


「というわけで、アーカムちゃん。狩人協会を動かしてくれないかな? ドラゴンクランと竜神会議は、学院内に絶対的に″狩人協会″を入れないくらい、かの秘密結社が嫌いなんだけど、本当の、本当に、仕方がない事態だし、今回は黙認するからさ」

「別に構いませんけど、ぇ、ドラゴンクランってそんなに、狩人協会が嫌いなんですか?」


 そんな事を匂わせる発言を、どこかの誰かがしてたような気がするが、こうまでハッキリ言われると、聞き返さずにはいられない。


「そこは大人の事情、だよ。アーカムちゃんは、まだ小さいからわからない事だらけだろうけどね」


 なにか因縁があるのか。

 いや、しかし、俺って無意識のうちにかなり危険な状況にいたんだな。


 学院側からしたら、俺なんてただのスパイなんじゃ……ん、そういや、あの宣教師がそんな事を……。


 宣教師の言葉の意味がつながり、ひとりで納得する。


 そして、新たに浮かんでくる不安。


「えっと、ビジョンパルスさんも、狩人協会が嫌いなんですか……?」


 恐る恐る、上目遣いで聞いてみる。

 ビジョンパルスは、キョトンとしていたが、すぐにニヤニヤとした笑顔のまま、顔をグイグイ寄せて、俺が地面と水平になるくらい迫ってくる。

 ほとんど、腹筋で体を支え、そのうえに彼女が乗ってる感じなので、新手の筋トレをしてる気分だ。

 

「あの、重……くはない、ですけど、な、なな、なんです、かね……」

「よしよし、いい子いい子、重いって言わない配慮ができる子は、いい子ね。そんな、いい子なアーカムちゃんをワタシは嫌わないよ。ゲートヘヴェンも言ってたけど、アーカムちゃんは、全然狩人的じゃないからね♪」


 喜んで、いいんだろうか。

 ″狩人的″がどういう人のことを指すのか、いまいち想像つかないけど、褒めてくれてるんだよね?


「それじゃ、アーカムちゃんが狩人協会に報告するにあたって、あんまりお粗末な要請にならないよう、このパルスお姉ちゃんが、あの異空間について情報を授けてあげましょう! 心して聞くように!」

「はい、お願いします、パルス姉さん!」

「パルス、″お姉ちゃん″、ね」

「……パルスお姉ちゃん」

「よろしい♪ 欲しい言葉をくれるなんて、本当にアーカムちゃんはいい子ね♪」


 ビジョンパルスによる、迷宮校舎ブリーフィングがはじまった。


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