第23話 s-22

 『個体名:榊 弘明はスキル、触覚遮断、嗅覚遮断を取得しました』


 ――ゴードン山賊団。俺を装着した頭領が束ねる山賊団の名前だ。


 こちらの世界に来た頃のように、パニックになり、あそこにファイアーをしていれば、俺は一生誰にも拾われずに人生を終えることになるだろう。


 ふ……俺は同じ過ちを繰り返すような愚か者ではないのだ……。俺は冷静だった……。


 ……プーン♪


 グホアアア!


 というのは嘘ぴょんで、この世のものとは思えないスメルが俺を襲った。地獄の日々は続いた。


 しかし、神はいた! それは、当然俺をこんな目に合わせた、あのクソ神のことではない。


 天恵とも言える、スキルが俺に宿ったのだ。俺はゴードンに履かれるという苦行を耐え抜き、何とか触覚と嗅覚をオンオフできるスキルを身につけたのだ。裏を返せば、それだけの地獄を俺は見たということになるのだろう。


 だって、この世界の人って大抵不潔なんですもの。俺は嬉々として、触覚と嗅覚をオフにした。


 快適なんてものではない。それはまさしく、地獄からの開放であった。


 ……


 さて、今俺がどういう状況に置かれているかというとだ。まず、俺がアルフォンスに拾われたのが、ダンジョン都市『バルディア』。そこをアルフォンスと一緒に脱出したは良いものの、アルフォンスをアフロヘヤーにしてしまった報いを受け、俺は捨て猫よろしく、『バルディア』から西の山岳都市『ユンヤン』。そこのの路上にダンボールに入れられ捨てられていた。


 俺のパンツ生もここまでかと思った矢先、拾ってくれたのが、ゴードン山賊団、頭領のゴードンだった。


 ――「ああ、またゴードン一味の仕業か……。馬車が襲われ、小さな女の子が攫われたらしいぞ……」


 だめじゃん!


 ゴードン一味は、コソコソと身分を隠して度々ユンヤンに忍び込み、盗みを働くというコスイこともしていた。そのときに聞こえた会話である。


 おまわりさーん! 女の子を攫った変態はここですよー!


 しかし、俺はパンツ。人々に声は届かない。


 ――この町の人々のために、何かできることはないだろうか。


 俺は確かにパンツだ。しかし、心をもつ『一人の人間』として、どう行動すべきかを必死に考えるべきだと思った。

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