第2話 s-1

 「らっしゃい、兄さん良い服そろってるよ!買った買った!」


 目を覚ましたら、そこは市場の服屋のケースの中だった。店主の親父さんが道行く人に声をかけていた。


 「おう親父、この下着いくらだ?」

 ドワーフらしき斧を背負ったひげもじゃの不潔なオッサンが俺を手にとって広げる。


 「ああ、それなら銅貨5枚だよ」


 「買った。親父さんこれ代金な」

 どうやら、俺は銅貨5枚の下着になってしまったようだ。このドワーフの嫁さん用だろう。


 …


 「おい親父、これ気持ち悪いから返品するぜ、履こうとしてらいきなり火が出て、火傷しちまった」


 「え?お客さん、うちは返品受け付けてないよ!」


 「返金はいい。とにかくこんなもんいらねえよ!」


 俺は、服の山に投げ入れられ、不潔なドワーフオッサンは立ち去っていった。


 …


 時を遡ること数十分前。宿屋の鏡の前で俺を履こうとしたドワーフのオッサン。俺はどうみても男性用下着、ブリーフの姿をしていた。


 ――迫り来る臭う股間。


 無理無理無理無理。

 心の中で悲鳴をあげた俺は、無意識に放火していた。


 …


 以上回想終わり。


 どうやら俺は火を放てるようだ。

 その後、俺は何人もの毛を焼いた。どいつもこいつも不衛生なやつらばかり。


 そして、ようやくフローラルな香りのするお兄さんが現れた。精神的ブラクラ攻撃を踏まされ続けた俺は、人間の姿をしていたら間違いなく死んだ魚の目になっていただろう。


 その爽やかお兄さんはアルフォンスという名前だった。


 もう、この人で妥協するしかない。男に装着されるなんて絶対に嫌だが、こうなってしまった以上仕方がない。


 ――人生にベストな選択肢など滅多にない。常にベターな方を選ぶしかないのだから。

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