かみさまあんまりです

餡乃雲

第1話 プロローグ

 ――人生はいつも唐突だ。そして、かみさまは手のひらの上でダイスを転がし、時にはそのままポケットにしまうこともあるということを俺は知ってしまった。


 ……


 榊 弘明(さかき ひろあき)。これが俺の名前だ。


 32歳、独身。彼女いない暦=年齢。これといった取り柄もなく。学歴も会社も平々凡々。普通の会社で営業の仕事をする毎日。


 余暇はゲームをしたり、WEB小説を読んで過ごす。あるいは被災地ボランティアや、介護ボランティアをライフワークにしている。


 そんな俺は会社帰りにいつものコンビニに立ち寄り、飯と晩酌用のビールを買って信号待ちをしていた。俺も仕事で疲れてボーっとしていたのだろう。居眠り運転のトラックに気づかなかった。俺はトラックに10メートルほどふっとばされ、全身打撲複雑骨折で救急車で運ばれたが、あえなくこの世とおさらばすることとなった。


 ……


 気がついたら、白いひげもじゃのジジイが目の前にいた。


 「ご愁傷様じゃのう」


 「誰だあんた」


 「わしが誰かなどどうでも良いことじゃ。覚えておらんかもしれんが、お主は交通事故で死んだ。お主はこれから、あらゆる可能性を選択できることになる。人として生まれ変わることもできるし、鳥になることもできる。カルマ値を積んできたお主には、望みを叶える権利がある。さあ、望みを言うが良かろう」


 ははあ、さてはこの人、神様だな。


 「当たりじゃ」


 パッチリとウインクする神様。心を読めるのか。

 そうだな…。

 

 俺は彼女のいない自分にとってのささやかな欲望を述べた。


 「俺はパンツになりたい!可愛い女の子に履いてもらいたい!」


 ――後から思えば、このときの俺は頭が沸いていたに違いない。俺は、全力でこのときの自分をぶん殴ってやりたかった。


 「よかろう。お主を下着の形をした魔道具として転生させよう。次お主が生きる世界は異世界じゃ。存分に新たなブリーフ生を歩むがよい」


 「え…」


 ――俺は、幻想的な光に包まれ、数多ある星屑の彼方へ飛ばされたのだった。

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