空爪
親戚の一人で、かなり変わっているおじさん。
あのおじさんは……妙な言い方だけど、正しい表現をすれば、拳闘家兼
「トーケンおじさん、遊ぼ。」
私が道場に行くと、そこには鉄製の柱に防刃チョッキを巻きつけた物が幾つも並んでいた。
スッ
「あぁ、八華か。良いぞ。これを片付けてからな。」
何本もの柱の陰から声が聞こえたかと思えば、
ゴン!ゴン!ゴン!ゴン!ゴン!
並んだ防刃チョッキ着用の鉄柱が全て真っ二つになった。
断面は綺麗に斬られた様になっていた。
おじさんの剣技。それは防刃チョッキをしれっと斬り刻む恐ろしい業物を使った、割とおかしな剣技、剣術。
そして、この剣術の最もおかしいのは……………………。
「よく斬れるね。」
「鍛えてるからな。まぁ、その内八華も出来る様になるさ。」
トーケンおじさんの手には何も握られていないって事。
そう、おじさんの得物は業物。ただし、それは鋼で出来た血の通っていない刃では無く、血が通い、おじさんの人生で最も使われた得物………『手』だ。
おじさんは手刀を使う剣士だ。
そして、その手刀はどんな妖刀も慄くほどの斬れ味を誇っている。
私にはおじさんの様な業物は無い。あんな鉄板どころか鉄柱を綺麗に真っ二つにしちゃう様な人間離れした業使えはしない。
だけど、だからこそ、私はおじさんに出来ない技を考えられた。
ネコ科動が爪で獲物を切り裂く様にする様子とおじさんの湯桶からヒントを得たオリジナル技。
下半身の踏み込みから始まる関節の同時稼働によって生み出される遠心力。その力が最も強く反映される指で空気を切り裂く事で生み出される幾つもの空気の刃。
見えざるその空気の爪は鉄柱を切り裂かずとも肉くらいなら容易に切り裂く。
しかもこれは……
「一度に何ヵ所も、遠くの相手まで切り裂く事が出来る!」
物を切り裂く刃は人の手足によって生み出された。なら、手足が物を斬れない道理は無い!
「これが『
「…………お姉ちゃん、人間は普通、手足でモノを斬れないんだよ?」
ポップスライムの核を回収しながらテミスちゃんがそう言った。
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