恐ろしく速い手刀、俺は自分で自分が何を言ってるか解らねぇ!

前話をもう一度。スロー映像で見てみよう。


バキッ!


ありのままに今見たことを率直に話すぜ。

八華がテミスちゃんの麻袋を手放した後、何かが起きたような気がしたと思えば、ヤンチャの顔にクレーターが既に出来ていた。

自分でも何を言っているかわからねーし、控えめに言って、何が起きたか全く解らねー。

……………仕方無い、本気を出そう!!

さぁ、今度はハイパースローで見てみよう!!

これならチーターの本気走りだって止まって見える!!



テミスちゃんの麻袋を手放した後、八華はヤンチャを正面に捉えたと思うや否や走り出しつつ両手を直刀の様に真っ直ぐにすると顔に手刀を一撃叩き込んだ!

いや違う!一撃じゃない!鼻を中心に一撃一撃手の角度を傾けて*を描くように連続手刀を行っていた!

何撃入れたかは数えられないがヤンチャの顔に線の数が多い*が描かれた辺りでテミスちゃんの元へと戻っていった。

この一連の動作を説明するのにここまで時間を要したが、実の所、ハイパースローでも十分速いし若干画像がブレているし、説明はその雑な映像から予想し、補完しているだけに過ぎない。

『恐ろしく速い手刀。俺でなくちゃ見逃してたね。』なんてもんじゃーねぇ。実際に俺は捉えきれていない。



『先手必消!後手は無い。(by八坂八華)』

倒れたヤンチャを後ろに2人は王都へと帰還した。



「お帰りなさい。

…!随分頑張りましたね。」

テミスちゃんを連れてギルドに行くと、リエさんが対応してくれた。

随分驚いた顔をしてる。

「スライムが沢山居たとは言え、大変だったでしょう!?」

「ご心配無く。テミスちゃんが手伝ってくれたお陰であっという間でした。」

実際、テミスちゃんには『手伝って貰った事実作り』をして貰うつもりだったけど、本当に助かった。

倒して探して拾って………実際にやってたら討伐数はもっと少なかったと思う。

「有難うね。テミスちゃんが居て助かった。」

頭を撫でながらそう言うと、テミスちゃんは笑っていた。

「明日も、頑張る。」

それだけ言った。


「スライムクエストは未だ終わる気配は無いので、のんびりどうぞ。でも、無理は禁物ですよ。」

そう言ってリエさんは重そうな麻袋を受付の卓の上に置いた。

「はい、初クリアおめでとうございます。これが今日の報酬です。 あ、王都とは言え、大金の持ち歩きは危ないですから、二人とも、先ずは宿に帰って、食事をして下さいね。」

「はい。」

「解りました。」

姉からの忠告を受けて、私達はギルドを後にした。

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