第38話 ジブリール侵攻
タルタロスがフェニアを主と認め、胸部からは入り口が開き、護を連れてタルタロスの内部へ。心臓部には、真ん中に宝玉が置かれ、手をかざすと外の様子が映し出された。
「なるほど、ここがコックピットみたいな物かしら? このタルタロスと共に護君と私は永遠の愛を誓い合うのよ」
「…………マジ、ヤバイ。どうしよう」
「さぁ、タルタロス、先ずはジブリールを壊滅させるわ」
その巨体をゆっくりと動かし、ジブリールへの進行を開始した。
***
「ジール様、神里君と連絡が取れません」
「伊織、念のため彼の家に行ってきて。何やっているのよ! あのバカは」
直ぐ様護の家に向かった伊織。
「おいっ、ミカエル様から伝言だ」
天界からラファエルが戻り、ミカエルからの伝言を話し始める。
「強力なエネルギー反応があった。恐らくタルタロスは復活しただろう。天界は全面的にバックアップすると」
「フェニアの奴やってくれるわね」
歯ぎしりをし、怒りを抑えるジール。それより、ガブリエルが暴れて良いのか? と言う顔をして大はしゃぎ。
「なぁなぁ? 暴れて良いのか?」
「時と場所を考えろ、バカリエル。ここで暴れたら世界が崩壊する」
「ラファエルお前まで、あたしをバカ呼ばわりか!」
「ちょっと? ラファエルちゃん、その話詳しく聞かせて」
今の会話でジールが何か閃いた。ガブリエルの力の秘密がタルタロスを倒す鍵になるかも知れない。
「ガブリエルは、魔導兵器メタトロンを武器に戦う。その威力は核兵器一つ分の威力はある。つまり、全力を出したガブリエルは世界を崩壊に招き入れる事もある。だから、僕が抑え役になっている。わかったか? クソババァ」
「それで、普段はバカリエルなのね。」
ババァと呼ばれ、仕返しと言わんばかりにラファエルの首を絞めながら、怒り露に答えるジール。何となくだが、希望が見えてきた。
「ジール聞こえるかしら?」
「その声はフェニア?」
城内に響き渡るフェニアの声。思念を送ってジールと会話をしている。
「おかげ様で、タルタロスは復活したわ。これからそっちに行くからよろしく」
「フェニアあんた取り返しのつかない事だとわからない?」
「知っているわ。人間界侵攻も考えたけれど、愛するダーリンがいるから、先ずはジブリールを壊滅させるわね。じゃあね」
「ダーリンですって? ちょっと待ちなさいフェニア」
「ジール様、大変です」
会話が途切れたと同時に伊織が戻ってきた。護がフェニアの婚約者にされた事を、両親が笑って語っていたと言う。
「別に恋愛感情なんてないけど、略奪愛された気分だわ。彼には一億円の大金つぎ込んでいるのだから、簡単に渡さないわよ」
護の身を案じる方向が違うのでは? と言いたいが、敢えて黙る伊織と二人の天使。現状、ガブリエルの力がタルタロスに対抗できる、唯一の手段なのだが。
ズガガガガガッ!!
急な地響きにより、慌てて外を見ると、漆黒の巨体がジブリールの街を無差別に攻撃している。
「ジール、聞こえる? 約束通り来たわよーん。取り敢えずタルタロスの力をご覧あれ」
「あれがタルタロス……」
胸部から放たれたビームが街を次々と破壊し、住人は慌てて避難していた。
「何か、何かあいつを倒す手かがりはないのかしら?」
ジールは必死に考えた。時間がない、時間が欲しい。フェニアに負けるのが悔しい。爪を噛みながら、苛立ちが募りに募っていた。
「あの、ジール様。タルタロスの過去の記録はないのですか?」
「それよ!! 伊織、あなた冴えているわね。急いで書庫に行くわ、伊織とバカ天使はタルタロスを街の外へ引き付けて」
「「バカはコイツだ!」」
ラファエルとガブリエルがお互い指を指しながら、タルタロスの元へ急ぐ。
「ラファエル、ジブリールと魔界の狭間ならあたしの力を存分に使えるぞ」
「バカリエル、急に頭が冴えるなお前」
「うるせー! あたしは人間界が気に入った。だが頼る相手が護と伊織しかいないのだ。だから、あたしは
威張って言うな! と二人がツッコミを入れた。タルタロスに対抗できる手段がわかるかも知れないと、少しだけ希望が出始めている。負けるわけにはいかない!
「作戦は決まったね行きますよ天使様」
伊織の合図で、ラファエルと二人でタルタロスの側面を魔法で攻撃し、ガブリエルは力を温存し、魔界との狭間でメタトロンを思う存分に使わせる。
「セイクリッドレイン!!」
「あらぁ? 護君の友達のメガネのお嬢ちゃん、私の顔に傷をつけた事、まだ許してないからね」
「許して貰おうなんて、これっぽっちも思ってませんから」
「いい心がけね。私と護君の愛を邪魔する者は容赦しないわ。これが終わったら私は護君と婚前旅行に行くからね」
フェニアの発言に、伊織が沈黙した。体を小刻みにプルプル震わせながら。
「神里君聞こえる? 君はそれでいいの? 皆で一緒に学校を卒業しようと言ったじゃない!! コキュートスを倒した時の君はかっこよかったよ。男なら根性見せなさい!」
大きな声で護に必死で呼びかける伊織。当然、護にも聞こえてはいるが、今の護にはどうする事もできない。
「こざかしいわね。タルタロスあの娘を八つ裂きにしなさい」
タルタロスの大剣が伊織を襲うが、ラファエルが間一髪、タルタロスの一撃を受け止める。
「伊織、このまま僕に着いて来い」
ラファエルが挑発しながら、タルタロスを徐々に魔界との狭間まで引き付ける。
「生意気な天使ちゃんね。いいわあなたの挑発に乗ってあげましょう。タルタロス」
「リョウカイシタ」
ラファエルの誘導にタルタロスがその巨体を大きく動かし、ラファエルと伊織に攻撃を仕掛けていた。
「でもね、攻撃しないとは言ってないからねぇ。さぁあなた方が死ぬのか先か、狭間に到着するのが先か勝負よ」
***
「これじゃない、これも違う」
ジールは部下と共にタルタロスに関する過去の記録を探していた。だが、まだこれと言う目星がない。
「ジール様、少しお休みになられては?」
「伊織達が必死で食い止めているのよ。休んでなんかいられないわ!」
「わかりました。今軽食をお持ちいたします」
軽食を口にしながら、再び本棚に目をやるジール。
「こ、これよ!」
魔神タルタロス、その力は世界を滅ぼす。しかし、光と闇の力を合わせた時、神の息吹きによりタルタロスを撃退し、力及ばず封印するしかなかった。だが、万全の状態で究極魔法ゴッドフレアなら、ヤツを完全に倒せる。
「これは、ご先祖様達が戦った記録……」
ジールは直ぐにわかった。
光と闇、すなわち、天界にあった光の書と魔界にあった闇の書が究極魔法ゴッドフレアを編み出す鍵だと。
「ちょっと待って! 確かタルタロスの封印を解く鍵が、二冊の本だとフェニアは言った……でも、二冊の本はゴッドフレアを生み出す魔法の書でもあるの? ………タルタロスにとっても、二冊の本はタルタロスに知識を与える貴重な本」
ジールの仮説は自信に繋がった。二冊の本がなければ、ただの巨人。二冊の本により、知識を生み出し、自我をコントロールしている。
「だとしたら、フェニアもいつか食われるわね」
希望が出てきたところで、急ぎ伊織の元へ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます