第2章 氷の女王コキュートス

第10話 ラミアが町にやって来た

 護がジールからの頼みを受けて早一週間、あれから悪い魔族は出て来ず、平和な日常が続いていた。ジールが出していた宿題は、朝ジールの使いが護の部屋にやってきて、回収にきている。


 いつもと変わらない授業風景、護達のクラスに教育実習生として、女性教師がやってきた。


蛇腹美亜へびはらみあと申します。二十一歳ピッチピッチだぞ、喜べ男子」


 確かに見た目は、ピッチピッチなエキゾチックな雰囲気を出している。何だかわからないが、護を除くクラスの男子は何故か蛇腹先生にメロメロ、女子は当然面白くない。


「神里君、あの蛇腹先生怪しくない?」


「無駄に乳がデカイな……」


「そこじゃないでしょー」


 どこに隠し持っていたのかは謎だが、ハリセンを取りだし、護に思いっきりツッコミを入れる伊織、そんな冗談を余所に護のスマホに着信が。


「はぁい、神里君、ちょっとこっち来てくれる?」


 突然のジールからの電話、学校が終わったら伊織と共にジブリールに行くが、何故か護の家に行けとジールから指令を受ける。


「神里君の部屋て、つまらないね……」


「すいませんねーエロ本なんて隠してないし、持ってないから」


 エロ本があると期待していたが、期待外れで思わず、つまらないと言ってしまった伊織。


 何て事を言っている内に、護の部屋のクローゼットから見慣れない男が現れた。


「ジール様の使いです。お迎えに上がりました」


 突っ込み所満載だが、それはもう、どうでも良かった。クローゼットを入り、ゲートを抜け、ジールの元へ辿り着く。


「待ってたわよ、早速だけど会って欲しい人がいるの」


 現れたのが、教育実習生の蛇腹先生であった。


「先生? どうして?」


「あら、あなたはクラス委員長の宮本さんに、神里君?」


「私ね………実は………」


 蛇腹先生の姿が次第に変わり、上半身人間の下半身蛇の姿に変わり出した。


「魔族?」


「そう、私は魔族で、ラミアよ」


 ラミアが何故ここにいるのか? ラミアは重たい口を開きだす。


「私ね、実は追われているの………前にカーミラを倒したのあなた達よね? カーミラのバックには強力な魔族がいるのよ。私はその魔族の企みに気付き逃げてるの………」


 ラミアが逃げてきた相手は、コキュートス。氷の様に冷たい眼差しと美貌を持ち合わせた魔族、氷の女王と呼ばれている。


「あなた達が前に戦ったカーミラは、B級魔族。コキュートスはS級魔族なのよ。これがどう言う意味かわかるよね?」


 魔族にはランク付けされており、D級からS級に分類されている。


 また、魔法を使う護達も、D級からS級に分類されており、護は当然D級、伊織はB級ランクの魔法使いだったとジールから説明を受けた。


「話を戻すわね。コキュートスがあなた達の世界を脅かそうと、何か企んでいるのよ。そこのラミアは只、平和に暮らしたいだけなのに、コキュートスに騙されたのよ」


 続けて、ラミアがコキュートスとの関係を話し出す。


 コキュートスは、人間界での暮らしをもっと有意義にしたいとラミアに話を切り出すが、条件として、詳しく話さずに手を貸せと要請してきた。そして、コキュートスの陰謀を知ってしまい、ジブリールに逃げてきた。


「コキュートスは、春、夏、秋、が嫌いです。特に夏なんか大嫌いです」


「あー、あれか、モテなくて僻ひがみで、夏が嫌いになったタイプだな……」


 真剣に話しているのに、場の空気をぶち壊した護、当然ボッチの護も夏が嫌いだった。


 さらに、クリスマス、バレンタイン、なんて特に、護にとってはカップルの一大イベントで、リア充祭りと呼んでいる。


「つまりは、ラミアを、コキュートスの魔の手から救って欲しいわけですね?」


「ビンゴ」


 護にハリセンチョップを食らわしながら、伊織が今回の任務と言うか、作戦を確認する。


「はうっ、あっ、あぁん、らめぇ、来ちゃった……」


 突然妙に色っぽい声をあげたラミア、下半身が蛇の為、蛇の習性で脱皮の時期を迎えてしまっていた。


「ちょっと、神里君、見ちゃダメ」


 伊織が慌てて、護の目を隠す、そりゃ年頃の男には、刺激が強すぎる。


「はぁ、はぁ、はぅあっ、あぁん、来ちゃう来ちゃう」


 こんな色っぽい声に、フェロモン分泌したら、男子生徒がメロメロになるのも無理はない。


 後、一押しだが、最後の脱皮に手こずり、伊織とジールの部下が脱皮を手伝う事に。当然、護は目隠しされている。


「らめぇ、そんなに強くしたら、らめえぇ、」


 五分経過、脱皮を完了し、清々しい表情のラミア、護には何をしていたのか、さっぱりだった。


 話を戻し、コキュートスの企みを聞く護達。


「コキュートスは、人間界の季節を一年中冬にしようと企んでるの、当然そんな事されたら、私下半身蛇だから、動けなくなるわ」


 更に、一年中冬にする所か、人間界の人間達を氷漬けにし永久氷度に陥れると言う。


 ラミアは、人間界の文化が大好きだ。春の桜、夏の海、秋の紅葉、冬の雪景色、季節は巡るから人間界は面白いと言う。


「とにかく、ラミアの身柄はこちらで保護するから、あなた達はコキュートスに備えて頂戴」


 ラミアの身柄はジブリールが責任を持って保護をする事になり、護達は家路に帰って行った。


「宮本さんは、どうやってジブリールに行き来しているの?」


 護の部屋を勝手に改造され、伊織はどうなのか気になっていた。


「私はね、神社の境内に小さい社あったでしょ? そこよ」


 何て罰当たりな事をするんだと、思わず思ってしまった。




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