死を描く。
暇だ。たまらなく暇だ。ランはそう思いながら、外を見る。戦乱の世には着実に近づいているが、こうも戦いがないと暇になってしょうがない。
そう思いながら、外の景色をぼぉーと眺めていると、軍が動いているのが目に入る。
「あれは、何をしているのだ。」
と近くにいたリリスに問う。
「ああ、魔王軍の残党が結集しているとかで、その殲滅作戦ですわ。たしか、ノルディン王国の南東側でしたっけ。」
良いことを聞いた。それを聞いた途端、暇で餓死しかけていた闘争本能が獲物を得たように騒ぎ出す。
すぐに、窓から飛び出て、戦いを求めて飛び立つ!!!
「戦い・・・戦いはどこだぁああああああ!!!」
そう言いながら、天高く飛び立つのであった。
言われた通り、ノルディン王国の南東側の上空に来てみると、足元に居るわ居るわ。魔物や魔人達がこれでもかと言うほど、集結していた。
すぐに急降下して、その軍勢の目の前に降り立つ!!
「ドン!」
と土埃を立てながら、魔王軍の残党を見据える。その姿は、血に飢えた鬼であった。突然の来訪者に、魔王軍は何事かと怯む。
私は大声をあげて、魔王軍に宣戦布告する。
「お前達、今から私と全力を持って戦え。」
その言葉に、魔王軍は笑う。
「たった一匹の人間ごときが、我々と戦うだと、ふははっはは。おかしなことを言う者だ。」
大将らしきものが、大声をあげて笑う。それに優しい私は、石をほいと投げて慈悲をかけてやる。
その石は勢いよく、その大将の心臓を抉る。その瞬間、魔王軍の目の色が変わった。本気にならざる負えなかった。
ならねば、我々は一匹残らず滅ぼされる。それを感じとったのだ。
その様子に私は喜ぶ。
「そう!!それを求めていたのだ!!」
せめても慈悲とその猛攻を待ち構える。そして、魔獣と化した軍勢と私ひとりの戦争が始まった。
その両手には、「朱筆」と「黒炭」が握られている。その筆達が赤い線を描く。一瞬で何百本という線が描かれる。そして、苦痛の声色がそれの後に色を付ける。
一本、また一本と赤い線。赤い線、線。線。
線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線線
私は顔色一つ変えず、描く描く。この大地に蠢く赤い線を描く。その線は地獄を現すかのようであった。最後の一線を加える前にその者に問う。
「汝、我は何ぞや。」
その絶望と諦めの色をした顔は答える。
「死そのもの。」
その言葉を聞いた私は、最後の一筆を描くのであった。
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