飛ぶ
身体を洗った後、堂々と泉から出る。そして、そのまま水滴が滴り落ちる。
「おい、アテナ!服を持て。それから、少し離れていろ。」
そう言って、アテナに服を預けて、私は、足を柔軟し始める。リンとアテナが言われた通りに離れたことを確認し、地面を足に力を込めて地面を蹴る。
その衝撃で、私は大きく飛ぶのであった。飛んだ私は、鳥が飛んでいる高さまで到達する。
「ふむ、少し力を入れた程度でここまでか。」
飛んでいる最中に、また足に力を込めて、空気を蹴るとさらに、大きく身体が空へと飛んでいく。先ほど、いた鳥の姿が点になるほどの距離まで飛ぶ。
身体についていた水滴はすべてなくなる。そして、飛んだ勢いがなくなってきて、落下するのであった。
下では、リンとアテナが大きく飛んだランの姿に、唖然としていた。
「飛んでいっちゃったね。」
独り言のように、アテナに話す。アテナもその光景がまだ受け入れられないのか、放心状態である。
『ヒューーーーーーーー!! 』
と空から音がするので、上を見上げると先ほど飛んでいったランが落ちてくるではないか。そして、爆風を出して地面に着地する。
泉の水が大きく噴き上がる。そして、リンとアテナは大きく飛ばされる。
「「キャーーー!!! 」」
と二人とも声を上げて、空を舞う。その時、ランが風の如く近づいてきて、ふたりを抱きかかえて、地面に着地する。そして、アテナが持っていた服を取り、着替え始める。
「お前たち、情けないぞ。この程度で飛んでいくとは、まだ修羅の畜生共でも、踏ん張って踏みとどまるというのに。」
少女ふたりは自分たちの常識外から来たランを虚ろな目で見つめていた。その目には、好意や嫌悪などはなくただ畏怖しかなかった。
この人は一体なんなんだ。この人にとっては、自分たちは虫けら以下の存在なのではないか、そんな考えが頭をよぎるのであった。
その光景をもう一人、遠くの方から見ていた者が居ることにランは気付いていた。嫌にそびえ立つ城の窓から、覗いていた少女のことをじっと見ていた。
その後、リンとアテナはランの後ろを追いかけていた。その顔はまるで、神を目にしたように、好奇と畏怖が入り混じった表情であった。
当の本人は、そんなことにはまったく興味がなく、気の赴くままに歩いていた。
周りの人々は、勇者を一瞬で倒した男に恐れをなしそそくさと逃げいくものや、どんな奴かと遠くの方から見物するものなど、個性の現れる反応をする。ランはその光景を見て、いとをかしと思うのであった。
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