鬼人、降り立つ。
物足りぬ世界
戦意のない女子たちに近づき、顔を見る。二人とも整った顔付きで、なぜか愛おしい。
しかし、そんなことより、私は、
「腹が減った。何か食えるものはないか。」
そう尋ねる。ひとりの女子がハッと気付き、干し肉のようなものを恐る恐る差し出す。私はそれを有無を言わさず、奪い取り食べる。
その味は何とも言えぬ甘美な味わいであった。幾ばくぶりにこんなにうまい肉を食っただろうか。
修羅の世界では、切ったものの血肉をそのまま喰らっていたので、こんなにうまいものは食えていなかった。
「もっとあるか。」
そう干し肉を差し出した
すると、もう一人の女子が話しかけてくる。
「どうしたんですかアルさん、どうしてそんなに平気なんですか。それに、なんだかさっきから雰囲気が違います。」
そう尋ねてくる。仕方なく話し相手になってやる。
「私の名前はランだ。アルなど知らんし、先ほど目が覚めたばかりでよくわからん。」
はっきりと言うと、女子は黙ったかと思えば、茫然と私の方を見ている。干し肉を全部食い終わるが、まだ腹は満たされない。
「おい、オナゴたち!! 近くに村はないか。」
と尋ねる。すると、尋ねてきた女子が、
「アルさんは・・・、どうなったんですか・・・? 」
藁にもすがるような声で、問うてくる。
う~~~ん、この身体の元の持ち主か・・・。私の中にそやつの気配はない、だが所々そやつの記憶が頭の中に残っている。
この女子ら、そやつにとって、相当大事だったのだろう。故に私は彼女らを愛おしく思う。この感情、久しく忘れていた恋と言うやつか・・・。
実に心が躍る!! 冴える!! 高鳴る!!
だが、所詮は他人の感情。私の感情ではない。しかし、こやつらの関係性は、この世界をあまり知らぬ私にとっては好都合・・・。どれひとつ利用させてもらおう。
「そやつなら、私の中で眠っている。」
そう偽りの真実を告げると、
「つまり・・・。あなたはランさんに眠っていたもう一人のランさんということですか? 」
「そうだな。」
そう言ってやると、そやつの無事がわかったと思ったのか、同時に彼女らは安堵しだす。片方は、泣きだしている。
「で、村はどこだ。」
そう言うと、
「あぁ!! そうでした。この魔物達を倒すクエストでしたから、すぐに村に帰りますよ。」
と言い、歩いて行く。干し肉をくれた女子もそれについていく。もっと食事に有り付きたいので、それに私もついていくのであった。
歩いて行くと、町らしきものが見えてくる。修羅の世界とは大違いである。
あの世界では街も村も、燃えていてなにもかもが崩れ去ったいた。なので、少々その街に驚く。女子たちの後をついていくと、建物らしきものへ入っていく。
すると、そこには男たちや女たちがいて、酒を飲んでいた。すると、女子達はある女と話している。しばらくすると、そのものから金らしきものをもらってこちらに近づいてくる。
「はい、ランさん。今回の報酬金です。」
そう言って、私に金色の銭を何枚か渡す。おお、久しぶりに銭を見たぞ。そう思いながら、黄金色に輝くその銭を受け取る。
「ア・・・じゃなくて、ランさんはこれから、どうするつもりなんですか?」
と干し肉の女子が尋ねてくる。
「飯を食べる。」
と答える。すると、別の女子が、
「そういう意味じゃなくて、この後どこに行くの。」
そう言う。ああ、そういうことか。
「そうだな。飯を食べたら、どっかで武器でも拾ってくるか。」
そう答えると、
「決まってないのね。そしたら、私たちと一緒に行動しない? 私達は元々、こ・・・、じゃなくて、仲間だったの。だったら、一緒に行動するのが自然でしょ。それにおいしい食堂も知ってるわよ。」
そう続けて別の女子が言う。
「ああ、そうするか。では、オナゴたちよ。私を案内してくれ。」
と言うと、
「私にはリンっていう名前があるし、こっちの子はアテナっていう名前があるのよ。」
少し怒り気味に言うのであった。気を取り直して、
「リン、アテナ。案内してくれ。」
と再度頼むのであった。
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