人生が終わるまでにやりたいこと

だるまかろん

⭐︎プロローグ 小学六年生の冬

 俺が小学六年生のとき、大津波が町を襲った。

「手を離すな!」

 俺はそう叫んだ。叫び声も虚しく、大津波が押し寄せ、友人と繋いでいた手が離れた。

「捕まれ!」

 俺はとにかく必死に引き上げようとした。しかし、俺の力が足りなかった。友人の手は離れた。

「………。」

 その手が離れた瞬間、俺は自分を責めた。それは、一生許されない失敗だった。

「振り返るな!」

 俺は上にいる人の手を取り、もっと上に逃げた。友人が津波にのまれたのは、一瞬の出来事だった。俺の小さな脳では、目の前の出来事を受け入れる余力もなかった。友人が、犠牲になった。その事実は俺を暗闇の中へ誘った。

 俺が日頃からもう少し筋肉を鍛えていれば、友人を引き上げることができたかもしれない。俺の中の後悔は、毎日大きくなっていった。

「四月から同じ中学だ、よろしくな。」

 昨日、友人と下校して、自宅に帰って夕食を食べた。当たり障りのない日常が、ただ幸せだった。なあ、戻ってきてくれよ。あの日あの瞬間に戻れるのなら、俺は何だってする。俺は涙が出なかった。俺がどんなに泣いても、友人が生き返ることはない。俺は、たった一人の親友を救うこともできない無力な生き物だと証明していた。

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