第六章 サークル壊滅大作戦!

第55話 サークル壊滅作戦、開始

「まさか、本当に北朝鮮に送金していたとは……。」

「山崎!何か知ってるのか!」

「昔、天道加世が説法で言ってたんだ。世界をリセットするには第三次世界大戦を起こすしかない、今それを実現できるのは……金正恩様だって。」

「北の将軍様か!」

「教祖は、北朝鮮がミサイルを日本とアメリカに発射することで、アメリカvs中国を中心とした第三次世界大戦が勃発すると言っていた。その時はまたイカれたことを言ってるなとしか思わなかったが……。」

「天道加世は北の工作員か!?」

「いや、工作員にしてはやってることが派手すぎるし、そんな説法じゃわざわざ自分が工作員だとバラしてるようなもんだ。ルーツがそっちにあるシンパだから、ひょっとしたら度々の北朝鮮旅行で何か吹き込まれたのかもしれん。暗号放送も解読してるみたいだしな。」

「それにしても、資本主義社会での成功こそ最高!っていう思想に洗脳されたサークルの奴らがボロボロになって稼いだ金が、北朝鮮に送られてたってのはなかなか皮肉だな。あいつら、これ知ったら発狂するぜ。」

「山崎、こりゃ俺達だけの手には負えないな。知り合いのテレビ局記者に相談してみる。シャブの件を自首するかは任せるが、取材受けるまで待ってくれ。」

「分かった。」


 ◇


 仮眠を取って目覚めると、外は妙に明るく、昼前になっていた。すぐに陽子にLINEを送り、昼過ぎに集まることにする。


 三人でアパートを出てデミオに乗り込む。山崎を赤羽の実家に送った後に車をレンタカー屋に返し、吉井と一緒に新宿地下街の欧風カレー屋に向かった。


 新宿駅東口から地下街に入り、御苑方面にしばらく歩くと「新宿中村家」という看板が見えた。そこから階段を降り、老舗を思わせる入り口をくぐると、想像よりも奥行きのある空間が広がっている。奥の席で陽子が既に待っていた。陽子は野菜カリー(中村屋ではカレーをカリーと呼ぶ)、済はコールマンカリー、吉井は純印度式カリーを頼む。注文もそこそこに、陽子が状況を確認し始めた。


「山崎さんを救出してきたって本当!?」

「本当。あいつ、群馬の山の中に軟禁されて......シャブ作ってたんだよ。それから、恭子さんも別の施設にいるらしい。群馬ってことしか分からなかったけど。」

「恭子もそんな危ないとこに...山崎さんみたいに、変なもの作らされてないといいけど。」

「山崎は幹細胞がどうとか言ってたけど、恭子さんは営業出身だろ?直接何か作らされてることはなさそうだけどな。それよりこれを見てくれ。」


 済はASUSのAndroidタブレットを開き、科学の道本部で拾ったQRコードやサークルの「バイト」、イーサリアムと北朝鮮の関係について話した。


「......これはデカいヤマになりそうね。私も本腰入れて取材してみる。」

「頼んだよ。山崎には取材させてもらえるよう言っといた。それから、アミノ酸サプリの中身も調べないとな。」

「それなら任せてくれ。知り合いの分析屋に頼んでみる。現物も持ってるしな。まあ、これからあいつらの製品を口にすることはないな。何が入ってるか分からんよ。」

「さすが化学系研究者だな。よろしく頼む。さて、この件の始末だが……警察に任せるのは当然だが、俺達で一発、デカい花火を打ち上げないか?」

「デカい花火!?」

「奴らを潰すには、まずサークルを潰すことだ。資金源を断てば何もできなくなるからな。そこでだ、杉永さんとヨッさんに協力をお願いしたい。」

「また悪いことを企んでるな。」

「ヨッさん、来月の頭は年に一度のアワードだったよな?」


 アワードとは、その年のサークルの活動を締めくくる全国会議である。会場はいつもと同じ幕張メッセなのだが、女性はドレス、男性はスーツやタキシードを着用し、師匠陣の高級車が展示される。他のマルチ商法団体でも見られるものだ。


「そうだな、しかも今回は人が減ったのを悟られたくないらしく、参加条件を緩くして沢山人を呼ぶらしいぞ。まあ、参加費だけでも稼げるからな。」

「そこだ。大量のサークル民を一気に目覚めさせるには、そのタイミングしかないと思わないか?杉永さん。来月七日か八日のタイミングで、取材結果を放送できない?」

「えっ、もしかしてそれって……!?何とか調整してみる。」

「ありがとう。ここでヨッさんの協力が必要になる。ヨッさんは、アワードのスタッフを申し出て、何とかスクリーンの映像を切り替えてくれ。」

「なるほど、ワタルのやりたいことが分かったぜ。ワタルはどうするんだ?」

「こんな面白いものを見ないわけにはいかないだろ。ヨッさんのダウンてことにして潜り込ませてくれ。」

「それは問題ないけど、こしじ配下に顔バレしないか?」

「ヨッさん、俺が女装コンテスト優勝者ってことを忘れてもらっちゃ困るね。」


 こうしてサークル壊滅作戦の準備が始まった。

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